指輪世界の第五日記。基本的に全部ネタバレです。 Twitter 個人サイト

フルートは欠点/リズと青い鳥各シーンメモ

4回めを見た後のメモ


1L)
さまざまな動物たちにパンくずをあげるリズさん
アライグマ(剣崎梨々花さん?)にはあげない
青い鳥が一瞬手のひらの上に飛んできて、去っていく


2M)
階段の下で傘木希美さんを待つ鎧塚みぞれさん
傘木希美さんがあらわれると世界のすべてが光り輝き音楽を奏ではじめる
一緒に歩いているとちょっとした羽なんかもくれたり、下駄箱をさわれたり、給水器で水が飲めたりするので最高に最高で幸福
その一方で、「傘木希美さんが好きなもの」、音楽室や作曲家や曲には興味がなく、むしろ嫌いに近い
なぜなら、最高に最高に好きなものがいる状態が最高に最高であって、それ以外のものにつきあう必要はないではないか?
最高の状態でだまっていてくれれば楽なのだが、なんかが好きとか言い出すので、それにつきあっている
傘木希美さんは最高の存在なのだから、最高存在が何かが好きだとか言い出さないでほしい
最高の存在が何かが好きだと言い出すたびに、鎧塚みぞれさんがつきあわなければならないものが増え、「時間あたり最高純度」が減るのだ
といって、そのつきあいがなければ友だちでいてくれないともいえるわけで、しかたがない
吹奏楽も、つきあいでやっているのだ。ただし、動機が消極的であるのと同時に執念は強い
今回は傘木希美さんが、この曲と物語が好き、コンクールがんばろうね、と言い出してきたので、これが鎧塚みぞれさんの新たなタスク、宿題となる
そしてラッキースケベチャンスを得て傘木希美さんによりかかろうとする鎧塚みぞれさん
だがぎりぎりで避ける希美さん。希美さんはそこまではしたくない
傘木希美さん「この曲は好きだよ。だって…」
曲が好きな理由を言わない。これはどういうことだろう??


3N)
「グミたべます?」フルートのパート練習


4M)
「本番なんて一生来なくていい」
鎧塚みぞれさんが好きなのは傘木希美さんの後ろを歩くことであって、吹奏楽部のコンサートが成功することより、それによってこの日々が終わることのほうが悲しい
宿題である絵本をめくる鎧塚みぞれさん


5L)
パン屋で働くリズさん
高校生が想像するヨーロッパっぽい町なのでディテールが雑
家族連れを見ると悲しくなるのはリズさんが孤独だから。これは中学生のときに孤独だった鎧塚みぞれさんには共感できる
ベッドに入るときにスリッパを揃える = 上履きを揃える = ここのリズさんは鎧塚みぞれさん
嵐が来て鳥が来る


6M)
練習が終わり、滝先生、吉川優子部長
吉川優子部長の「目標は金賞」に気合いなく「はい」という鎧塚みぞれさん


7)
剣崎梨々花さんとダブルリードの会が近づこうとしてくるが鎧塚みぞれさんは断る
一方、鎧塚みぞれさんは傘木希美さんと最高の下校をしたかったが傘木希美さんは「今日はパートの子たちとファミレス」と断る
表情をととのえて何か文句ある? とマウンティングする傘木希美さん
手も足も出ずにひっこむ鎧塚みぞれさん
下校中の廊下で剣崎梨々花さんが希美さんを呼び止めて相談するが、希美さんはしらばっくれてこの相談を実質断る
みぞれさんは希美さんの支配している縄張りなのだ
しかし剣崎梨々花さんも強い。このゼロ回答に対して謝礼のたまごを渡すのは、あきらめずにこの後みぞれさんへアプローチしていくことの先払いだ


8)
鎧塚みぞれさんは図書室に行き、(2)で与えられた宿題のために原作本を借りる


9L)
鳥にスープを飲ませるリズさん
洗濯物、パン屋、お風呂、サンドイッチ
「なぜここに来たの?」「リズがひとりだったから」
離れていきそうな鳥におびえるリズさん


10)
別の日の朝の学校
「大好きのハグ」「じゃあ…ん!」
スーパーラッキースケベチャンスを見せておいてキャンセルする傘木希美さん。(2)と同じ
これは梨々花さんのような別の競争相手が出てきたからやっている
「互いに素という」


11)
体育のバスケ
中川夏紀さんのシュートは外れる
笛が鳴ったが、交代してコートに上がらないみぞれさん
みぞれさんは「さっきあのスーパーラッキースケベチャンスにとびこんでいきたかった…でも…きっと外れていただろう。わたしはとびこまない」と考えている


12N)
フルートパート
デートの話題を振られてわずかにひきつる希美さん。おぼこい


13M)
フグをめでながらフルートパートを監視する鎧塚みぞれさん
フルートの光が最高に最高で幸福
希美さんの後ろ姿を回想。これは(8L)で走り去ろうとする鳥の後ろ姿と同じ
目を開けると希美さんは去っている


14N)
「フルートのソロはのぞ先輩で決まりだよね」と言われてうれしい希美さん
口パクで「がんばろう」


15L)
「リズ、月がうまれたわ」と嬉しそうな鳥
「あしたも遊べる」「大好きよ」「わたしもよ」
と言いつつ窓を開けてどっかに遊びに行く鳥、それに気づくリズさん
これは希美さんは最高に最高だが去っていくということ
食事も別のものを食べるようになっていく
「冬が来たらどこへ行くの」
また別の夜に青い羽を拾う
動物たちにパンくずをやりながら上空の小鳥たちを見上げる鳥とリズさん
いずれも、みぞれさんから見て希美さんとの別れの恐怖を示唆


16M)
生物学室のフグ
3匹いるが鎧塚のぞみさんは1匹しか見てない。お気に入りの1匹がいたりする??
新山先生が来てフルートとの連携が大事と言う
回想、希美さんが退部したときに無言だったこと。このときも希美さんはみぞれさんに直接ではなしに、間に部員たちを立てて間接的に伝えた
リズさんが理解できないと言うのぞみさん
新山先生はパンフをわたして音大を紹介する


17N)
フルートパート
希美さんは希美さんで、みぞれさんほどではないが、みぞれさんを監視している
フグの餌やりに興味を示す希美さん。みぞれさん非常に喜ぶ
ふたりきりの空間に来てくれるとはこんなに嬉しいことはない。それは(2)の朝のふたりきりの時間が増えるようなものだ
正直、吹奏楽部より、フグの餌やりをふたりきりでやれるほうがいい
みぞれさんェ…
パンフレットに気づく希美さん
 ①「新山先生がくれた」
 ②「わたしもこの学校受けようかな」この発言は希美さんは非常に緊張して言っている
 ③「じゃ、じゃあわたしも!」
 ④「へ?」驚く希美さん
この④の「へ?」はなんだ??? 傘木希美さんの中での鎧塚みぞれさんの理解はどういうことになっているのか??? ②を言うときにどういう返答がかえってくることを身構えていたのか??


18)
ピアノを囲む4人
みぞれさんがピアノを弾く。それを見て「機嫌を直したか」と安心する中川夏紀さん
希美さん目をうるませる。おそらく、まだ(17)③について心が揺れているのだろう??
中川夏紀さんと吉川優子部長が会話している
「同じ大学が志望校になったが、それはそれぞれが独立した個人の動機を持って選んだ大学が、結果として同じだったのであって、相手の選択に影響されて選んだわけではない」
この会話は希美さんとみぞれさんの現在の状況、(17)に対してそのままぶっささる話だ
(17)②③ はそれぞれ、相手の選択にめっちゃ影響されて言い出した決心であり、互いにもたれかかっての選択なので、根拠が非常に弱い
希美さんは「みぞれ、音大受けるんだよ」と発言。これは観測気球を上げている
中川夏紀さん、吉川優子さんからするとこういう観測気球はウザい
もし、コンクール前にフルートとオーボエのエースがなんらかのトラブルを始めてガタガタになったら、部の受けるダメージは大きいし、部長副部長というリーダーも大きな負担と傷を負う
傘木希美さんはトラブルメーカーとしては前科があり、安定性については疑われている
本来、鎧塚みぞれさんについては、お前が第一優先権を持っており、お前が管理責任者なんだぞ。ちゃんとケアしろよ。する気あるのか? 大丈夫か?
なんらかの問題があるとして、なぜ2人のときに対決、解決しようとしないのだ?
この4人のときに言い出して、負荷を分担させようとする希美さんの振る舞いは、吉川優子部長にとってはいらだたしいが、中川夏紀さんは人の弱さをかばう
ジョークじゃん」にふたたび深くがっかりする鎧塚みぞれさん?
「行こうよ」「あがた祭り」「優子も夏紀も空いてるよね」とまたぎりぎりの線で鎧塚みぞれさんをいじめる傘木希美さん?
「他に誘いたい子いる?」「いない」「そっか」ここで剣崎梨々花さんを紹介しない傘木希美さん
つまり鎧塚みぞれさんを自分ひとりで管理しきれず、持て余しはじめているにもかかわらず、独占もしたいのだ
そんな自分の卑怯さに苦しむ傘木希美さん


19)
剣崎梨々花さん、フルートパートを参考に「みぞ先輩」呼称で距離を詰めはじめる
青い羽をもらうなんて「やっぱり」仲良しですね。これは(7)で剣崎梨々花さんが、2人の仲にわずかにも齟齬を感じていたということ
のぞみさんの文庫本を持つ手がこわばる
剣崎梨々花さんがダブルリードの会に誘うも、「またいつか」と断られる
「わたしがいても楽しくない」自分は傘木希美さんのような人気者ではないという意味


20)
図書室。1ヶ月の延滞を怒られる鎧塚みぞれさん
「図書室の本はみんなのもの」傘木希美さんのような人気者は、いつかみんなに返さなくてはならない
「又貸しはいけない」これはどういう発言…??


21)
リードを削る鎧塚みぞれさん
剣崎梨々花さんにこんどやり方を教えると約束し、喜ばれる
オーディションに落ちた、一緒に本番で吹きたかったと泣き出す梨々花さん
鎧塚みぞれさんは「本番で一緒に吹く」ことが好きというわけではないが、好きなものに振られるという悲しみはわかる
いわばフラレナオンの会じゃよ


22)
じゅうたんを敷く鎧塚みぞれさん
ハッピーアイスクリームという話を聞く
椅子を持ってくる傘木希美さん。窓を開ける。これは窓を開けて飛び去ってしまう鳥のこと
水遊びに誘う傘木希美さん。剣崎梨々花さんの名を挙げる鎧塚みぞれさん、それにショックを受ける傘木希美さん


23)
チャルメラを吹く鎧塚みぞれさん
水遊びの写真を送る剣崎梨々花さん。自然な流れの中でラインチャットで「大好きです」と告ることに成功
2人でオーボエを合奏。あれ? これ実質寝取りセッ


24)
オーボエ合奏を聞く中川夏紀さん、そして傘木希美さん。この立場をフランス語ではcocueと言うようです


25)
全体練習、滝先生
「問いかけに答えろ」「心をくみとれ」
お前ら話し合ってないだろ、というそのまんまなことを言う


26)
リードに糸を巻く鎧塚みぞれさん。吉川優子部長が来る
「きっと受かるよ」「喜んでくれる?」「もちろん。すごく嬉しい」「よかった」
吉川優子部長は(18)(25)から、ケアが必要かと様子を見に来たのだ
ただし深入りはしない
傘木希美さんと鎧塚みぞれさんとの間に2人の問題があり、それを解決できればベストだが、そのために干渉して失敗すると自分や、さらに部全体に影響が拡大するリスクがある
コンクールを前にして、解決するメリットより、リスクを回避するほうを選ぶ安定型が吉川優子部長である
そこに逆のタイプである2年生の高坂麗奈さんが挑んでくる
高坂麗奈さんはリスクを取り、波風立てて、チームのポテンシャルを引き出し、高いパフォーマンスに挑んでいくタイプ。次期部長になる気満々で、ややフライング気味にマネジメントというものを試し始めている
「相性悪くないですか」
「そんなことない」即答。崇拝対象との間に相性などという概念はないのだ
「窮屈なのはわたしが鳥を逃がせないから」
「わたしの手で解放するなんてできない」
「ずっととじこめておく」
図書館の本を延滞するように、鎧塚みぞれさんの解釈するリズさんは鳥を放てない
うまく演奏できないのは与えられた宿題をいまだに突破できない自分の責任であって、傘木希美さんに相談する、話し合うといった概念はない。滝先生が話し合えって言ってるのに…鎧塚みぞれさん…
しかし、曲想に対してそれを再現できないことに強く悩む、曲想を理解しなくてはならないはずだと強迫される、という、演奏家として大事な点ができているとはいえる
高坂麗奈さんはこのアプローチを諦めて素早く撤退する。まだ次の手を持っている


27)
傘木希美さんと中川夏紀さん。模試の相談
「何か聞いてる?」自分とのぞみさんとの間に入って連絡役になってくれないかと甘える傘木希美さん
「根に持ってたりするのではないか…話してくれない」「ソロも息合わないし」


28)
ダブルリードの会の4人


29)
与えられた曲に対して「また会いに来ればいいと思うんだよね」などと言う傘木希美さん。これは(26)での鎧塚みぞれさんの逆で、曲想が理解できないとあっけらかんと言ってしまっている。これは演奏家として鎧塚みぞれさんに負けてしまう点


30)
全体練習
不満な橋本先生
「ソロのところ、あとでもうちょっと」
雨が降る


31)
新山先生に指導を受ける鎧塚みぞれさん
それを見る傘木希美さんからすると、自分には相談しないのに新山先生とは話す
嫉妬込みで怒る傘木希美さん。だが、鎧塚みぞれさんからすると、崇拝対象は相談相手ではなくて、タスクを与えてくる存在なのだ
「怒ってる?」
「そんなことないよ」
じゃあ難しいタスクに挑んでいる自分に対するご褒美ハグを要求する鎧塚みぞれさん
「今度ね」
マジかよまだ努力が足りないというのかよ、と考える鎧塚みぞれさん


32)
音楽準備室の3人
「うまくいってないの?」「間に合わせる」
2年の2人の第三楽章ソロが聞こえてくる


33)
とぼとぼと廊下を歩く鎧塚みぞれさん。聞こえてきた2年の第三楽章に窓をあけかけるが、やはり自分は、自分の理解しているリズは窓を閉めてしまう
高坂麗奈さんは「こういうふうに吹いてみたらどうですか。たとえばの話です」と演奏によって鎧塚みぞれさんをゆさぶっている
これは(26)での言葉でのアプローチがうまくいかなかったから別の手で問いかけている
鎧塚みぞれさんを納得させるには至らないが、鎧塚みぞれさんはその足で新山先生を訪ねる


ていうか傘木希美さんを訪ねろよ!! なぜ他の人のところに行く
それは逆もそうで、傘木希美さんも鎧塚みぞれさんのところに行かずに他の人のところに行く
これは鎧塚みぞれさんにとって傘木希美さんが崇拝対象であり、タスクを与えてくる存在であること
崇拝対象、幸福の源であって、互いに話し合って理解し合うような存在ではない。理解というのは価値を毀損する攻撃性も伴うことだ
また、鎧塚みぞれさんは傘木希美さんに会うと、ただ幸福になってそしてもっと幸福になろうとして、演奏や将来の相談なんか消し飛んでしまう
一方、傘木希美さんは、鎧塚みぞれさんのほうが自分よりも演奏家として上であることをうすうすわかりつつも、それを認めないために支配し独占しようとしてしまう
なので毎回、この2人が会うと、どちらも演奏や将来の話をしないで、幸福になろうと近づく鎧塚みぞれさんを傘木希美さんがおしとどめ、かわすパターンになって終わってしまう


34)
鎧塚みぞれさんが新山先生に相談している一方、傘木希美さんは部長副部長に将来の相談をしている。だから君たちそれをお互いにだな…
「本当にプロになりたいのかなって」
「それ、みぞれは知ってるの」
「知らない」
怒る吉川優子部長、とりなす中川夏紀さん
それぞれの部屋でリズと鳥の解釈の話
「「希美が鳥、みぞれがリズだと思っていたが、逆なのかも」」
ここで画面2分割でそれぞれが同時に叫ぶが、顔はズレている
傘木希美さんが発見した考えは、これまで、自分が鳥だとして、ときどき帰ってくるぐらいでいいじゃないか、と思っていて、その軽さを恨みに思われているのかなと思っていた? しかし、自分が(7)(18)のように鎧塚みぞれさんを支配し囲い込んでいることと、リズの鳥籠とを重ねる解釈にいたる
鎧塚みぞれさんが発見した考えは、リズというオーボエを、タスクを与えてくる崇拝対象として表現すればいいではないかということだ。崇拝対象に言われたら、鳥はそれに従うに決まっている。つまりみぞれさんの中にある傘木希美さんのイメージを表現すればいいということだ。それは時につらいタスクを課してくる最高に尊い存在だ。その姿は熟知している


35L)
鳥を外に出すリズさん
飛ぶ仲間はたくさんいて、残されるリズさんは孤独


36)
「進路調査の紙、白紙で出したの」自分が鎧塚みぞれさんに嫉妬していたことを認める傘木希美さん


37)
ベンチに座る傘木希美さん「なぜ籠の開け方を教えたのですか」


38)
スーパーオーボエタイム
フルートの弱々しい音は聴いていない。崇拝対象の欠点、弱点は棚上げにして意識の外に置いてしまう。これはこれまでもずっとそうしてきた


39)
演奏が終わり、感動を伝える部長、部員たち
高坂麗奈さんにとってはリスクをとって人のポテンシャルを引き出した大きな成功体験となった
みぞれさんは髪を握りしめない


40)
タスクを達成したので受納確認にいく鎧塚みぞれさん
「泣いてたの?」
自分が崇拝対象を傷つけたという発想がない。自分が傷つけることができるような存在だと思っていない
「手加減してたんだね」「ちがう」「実力あるもの」「ちがう」
「わたしはすごくないから」みぞれさん無言。傘木希美さんに欠点がもしあるとして、それは鎧塚みぞれさんの処理関数に入らないのだ
同様に「軽蔑されるべき」(7)(18)のような点も棚上げして意識の外に置いてしまう。みぞれさんにはそんなことは問題ではない。問題にする気はないのだ
「希美はいつも勝手」「わたしにとってはずっと今」
「希美はわたしの全部」「中学で声をかけてくれたときから」好意の長さを言う表現なのだが、希美さんには、この状況にわたしを連れてきたのはあなたではないか、と責めている言葉に聞こえる。なので
「ごめんそれちょっとおぼえてないんだよ」かなり大きく傷つけて間合いをとろうという発言だが、のぞみさんには通用しない。無視するからだ
タスクの報酬、大好きのハグを要求し査収する鎧塚みぞれさん。ついに告白する
「希美の髪が好き、希美の足音が好き…」
「希美のフルートが好き」と言ってくれることを期待する傘木希美さん。しかし
「希美のぜんぶが好き」という言い方。これは全部といっても欠点は含めないのだ。フルートは欠点なのだ
そこで
「みぞれのオーボエが好き」と返す。100と言われて10と返すようなものだが、もう一声、110と返ってくることを期待
しかしみぞれさん、これをあらためてスルー。みぞれさんにとって傘木希美さんは最高に最高であり、欠点は無視する。したがってお世辞を言って傷をいたわるという処理も生じない
傘木希美さん「ありがとう」希望を断たれたわけだが、進路の迷いは解決したという面のこと


41)
中学を回想する傘木希美さん
中学からずっと詰めていた息を吐く。みぞれとの関係であり、吹奏楽についても


42)
図書室で本を返す。道が別れる2人。それぞれ1羽ずつ籠から出て飛んでいく鳥


43)
楽譜に「はばたけ!」というタスク


44)
帰り道の階段。自分の食べたいものを言う鎧塚みぞれさん。先に校門を出る
しばらく鎧塚みぞれさんが先を歩くが、やがて横並び、ふたたび傘木希美さんが先に歩く
「完璧に支えるから」
「わたしもオーボエ続ける」
「「本番、がんばろうね」」
ハッピーアイスクリーム
振り返る傘木希美さん。めちゃ驚く鎧塚みぞれさん。われわれには見えないが、それはみぞれさんが初めて見る顔なのだろう
joint




http://liz-bluebird.com/interview/
https://eonet.jp/zing/articles/_4101959.html
https://cho-animedia.jp/special/41881/
http://kyuusyuuzinn.hatenablog.com/entry/2018/06/05/062522
https://fusetter.com/tw/PyNY7#all
https://togetter.com/li/1229685
https://zunguri-69riz.hatenablog.com/archive/2018/05/23

3回めを見た後、4回めを見る前でのメモ。


1)
鎧塚みぞれさん「はーマジ毎日が輝いている。尊い
傘木希美さん「別れの物語もいいものだと思うが、どう思う?」
鎧塚みぞれさん「なにィ!? それは別れたいという意味か?? しかし他意のない雑談ともとれる…わからん…!!」


2)
担任先生「進路票出して」
鎧塚みぞれさん「うーむ。進路か。傘木希美さんが進路を決めるまでこちらはなんとも言えない。後をくっついていく派としては楽でありつらいところだな」


3)
鎧塚みぞれさん「まあ実際、コンクールが終われば音楽を介した関係がなくなり、さらに来年には卒業しなければならない…つらいが…避けられない…しかし私が笠木希美さんの後をくっついていく派であることは自他ともに明白であり、傘木希美さんもわかっている事実。その私に別れ話を持ち出してきたとしたら、くっついてくるな、別の進路に行け、ということになるが…」


4)
新山先生「音大どう。あるで」
鎧塚みぞれさん「うーむ。音楽に手応えはあるが、それより傘木希美さんの真意がわからんことのほうが問題だ。原作本を読もう」


5)
傘木希美さん「それなに? 音大のパンフじゃん! わたしも音大にしようかな」
鎧塚みぞれさん「それは願ってもない! 音大行こう。やったぜ。けっきょく別れ話じゃなかったし、進路も決まり、すべて解決した。ピアノが捗るぜ」


6)
鎧塚みぞれさん「しかしこの解決には疑問も残る…考えてみると、傘木希美さんは(1)の時点で、自分の進路におよそ明確な決心がなかったわけだ…わたしと音楽とがセットならついてくる、ということになる…わたしについてくる…わたしが先手…それに音大行こうというのにお祭りや水遊びをしている…」


7)
鎧塚みぞれさん「まてよ、これパターン入ってない? 吹部/音大に入って、希美さんが音楽の苦痛に耐えられなくて抜けて、わたしが残る。パターンパターン。見えてきたよ! いま、あの時と同じところに立っているんだ。音大に行けば希美は大きく傷つくかもしれない。希美は、音楽の喜びを楽しむ力は十分あるが、音楽の苦痛に耐える力が十分ないきらいがある。わたしと逆の特性だ。この線で進んでいくとしたらまずいかもしれない」


8)
鎧塚みぞれさん「しかし、かといってどうすればいいのか…間合いに踏み込もうとしても傘木希美さんの防御技術にはわたしのクソザコ貧弱コミュニケーション技術ではつかまえられない…時間は迫ってくる…どうやってどうすれば…」


9)
鎧塚みぞれさん「うーむ…どうするのかを決めるのは実に苦手だ! 決めるということが理解できない。わたしは先手を取ったことがなく、後手番たることをよしとしてきたからな…」


10)
新山先生「先手になれないのなら後手になればいいじゃない」
鎧塚みぞれさん「天才か。その発想はなかった。後手番をとってしまえば、相手は先手にならざるをえない!」
新山先生「そのオーボエを使え」
鎧塚みぞれさん「そうかこいつで…こいつなら深く切り込める。まかせろ。そしてぶっさしたうえで、決めて、と迫ればいい! その線でいきますわ」


11)
鎧塚みぞれさん「あと、いずれにしろ傷つくのだとしたら、音大の誰かではなくて、わたしが傷つけたいという気持ちがないではない」


12)
鎧塚みぞれさん「音大入ったらこんな連中の演奏する音がまわりじゅうから聞こえてくるよ!! ねえどんな気持ち!! どうなのどうなの!!」
傘木希美さん「とてもつらい」


13)
鎧塚みぞれさん「では改めて聞く。わたしと一緒に音楽の苦痛に耐えるルートに行くのか、行かないのか。決めろ」
傘木希美さん「行けない。ここで別れる。あなたは音大へ進む」


14)
鎧塚みぞれさん「よろしい、了解した。これでわたしが後手番であり、やることが決まった。満額回答からはほど遠い言葉ではあるが、正直わかっていたところはある。その残念賞でも、あなたと音楽を介した関係のつながりとして自分の心の中に固く残すことができる。今までも含めありがとう。わたしは、決めてもらったことを苦痛に耐えて行うのは得意だ」


15)
傘木希美さん「もう一声つけてくれると嬉しいのだが」
鎧塚みぞれさん「リップサービスはしない。わたしはわたしにない能力の面であなたを尊いと思っている」
傘木希美さん「なるほど、満額回答にはやはりならないか。道理だ」

人々はなぜ逸見エリカのことを考え続けてきたのか


「みほの黒森峰からの出奔って、具体的には何の誰のどういう原因の責任から生じたんだ? 戦車道のルール上における安全性とは? 連覇記録の価値とは? 黒森峰における西住流家元の立場とは??」

「脚本の人そこまで考えてないと思うよ」

「ほう…それならそれはそれでいい…もしもここに逸見エリカというキャラがいなければな! 逸見エリカはみほの出奔によって《なんか感じわるいことになってしまっている》キャラだ! 世界設定の不備によってキャラクターが感じわるい状態のままに置かれ続けることは不当であり、解消されなければならない!! あるいは、解消されないのであれば、補償されなければならない!!」

隠された希望と責任、終わらない悪夢の演説/ダンケルク


ダンケルク、なんか感想が…あんまり」

「あら、そうだった? どんなかんじ?」

「フランスが一応時間稼ぎしてて、そこはまだフランス領なのに、フランス人が犠牲にされていったり、それでイイ感じに終わってんじゃないよと思う」

「ふむ? あの映画の終わりは、いい感じな終わりではないと思うけども」

ハイランダーズの子は、不貞腐れた後、新聞の論調に満足して喜んでたよね。新聞や世論的に盛り上げる展開で終わってる。戦争そのものが理不尽ってことにはなってるが、なんかポジティブな意味付けしてるラストで、頭打った子とか、落ち込んで死んだのに、新聞載せて美談にしてしまって終わる。イギリス全体の世論、語られ方としては、ピンチだったけど頑張った、まだ頑張れる!!ってことで、その後実際、イギリスは耐え切って勝つわけだ。この撤退戦は大変だったけどよくやった。人類捨てたもんじゃない!ってエンド」

「んーとですね、まずひとつ、違う視点から見ていると、同じ事柄がぜんぜん違って見えることがある。あの映画では、着水した戦闘機の窓から手が振られていて、無事だよ、という意味に見えたものが、そのあと上空からでなく水面の側から見ると、窓が開かずに溺死しかけていたということがわかる。あるいは、陸軍からは空軍の苦闘が見えていなかったりね。世論が新聞の視点から盛り上がる、一方で、じゃあ別の視点、現場や兵士の視点ではどうだ、ということだ。つぎに、これは僕もどなたかの呟きで気づかされたのだけれど、あの個人ヨットの船長、一見、映画を通じて、つねに冷静に行動しているのだけれど、実は彼の動機には、『万一、長男が生きていて、大陸で助けを待っているかもしれない』という思いがおそらくあるんだよね」

「ほう」

「だから着水した戦闘機に向かうときに態度が乱れているし、そしてそう考えると、そもそも海軍に引き渡さずに自分で出航してしまうこと自体が、実ははっきり衝動的な行動なんだよ。彼は、万が一、何かの間違いで、長男にまた会えないだろうか、という発作的希望に従って船を出してしまう。そう考えると、次男を一緒に連れて行ってしまうのも、倫理的にはけっこう怪しいし、次男の友人を連れて行ってしまうのは、やはりこれは失敗なんだよ。ミス、やらかしなの。ただ、船長はこの自分の感情を、態度と立振舞いの下に強く抑え込んでいるから、勇敢な大人が立派に行動しているように見える」

「えー?」

「だから、あの友人の死には、さかのぼると船長に責任はけっこうあるんだよ。三人目の人手は必要ないわけだし、長男を探すこと自体が個人的夢想なのだから」

「強引な気がするなあ」

「一般的に、戦争というのは悪行を善行の側にシフトさせていくはたらきがある。たとえば、通常、他人に依存性のある薬物を与えるのは悪い行いだが、地上を援護する作戦時間を増やすために、疲労困憊した戦闘機パイロットに覚醒剤を与えるのは、数百人の命を救う善い行いになってしまう。大規模な悪が頻発するようになると、小規模な悪は善のほうに含まれるようになってしまうわけだ。ダンケルクでのあの友人の死は、もし平時だったら、事故の原因が調査され、関係者の行動の理由が問われていくだろう。しかし、戦時には死は頻繁に起き、それは敵や危機に立ち向かう立派な死ではない理不尽で無意味な同士討ちであることも少なくない。安全管理も低精度で速度重視になるからだ。戦争遂行上の価値の低い少年について、その原因と責任者を精密に調べる手間など意味がない。そんなことを調べている間に、次の敵がやってくるので、追求を浅く切り上げて戦ったほうが善なのだ。船長と次男は、友人の死を修飾して新聞社に語り、英雄譚にしてしまった。一応、友人の発言を元にはしているが、本当のところは、自分たちの責任を隠蔽してしまっている。しかし、いまその戦時に、彼らの真実のその部分的責任を、告白したとしても誰が聞くというのだ。社会はそんな微妙に入り組んだ真実に聞き耳を向けるような状態ではない。社会は惨劇か栄光か、英雄か悪玉か、チャーチルの勇壮と悲剛な演説を伝え、灰色で煮え切らない理不尽な小話は戦史の豪流の中に沈めてしまったほうが『善い』…」

「じゃあ、それでいいってこと?」

「いいわけではない。『戦史の豪流の中に消えていってしまうということを、この映画は描くよ』、ということだ。チャーチルの鋼の闘志の言葉は、社会を奮い立たせ、敗北を耐えしのぎ、勝利に導くだろう。しかし、その言葉を聞いた一兵士の、うんざりした憮然の表情でこの映画は終わる」

「うーん」

「僕は感心したのが、公開前にダンケルクの予告を見たときに、『we shall fight on the beaches, we shall fight on the landing grounds, we shall never surrender』の口調が変だなと思ったのね。チャーチルの有名な演説が、妙に弱く震えたような声で読まれていた。でも、本編を見終わると面白い。チャーチルの国家の視点を体現した力強い闘志の演説は、現場の兵士の視点から見ると、悪夢が終わらないことを意味している。無事を知らせて振られる手のように、視点が変わると違うのだ。兵士の視点からは、まだ終わらないんだ、また次の戦場で戦うんだ、次の次もやるんだ、ずっと戦うんだ、ということだ。兵士はけっきょくダンケルクから脱出できなかった。それがあの映画のオチだ。チャーチルの最も知られた就任演説、挙国一致を求める歴史的テキストを用いることで、お得意の悪夢のループ構造を作り出している。おそるべき脚本力だ」



spcateg漫画/アニメ/映画[漫画/アニメ/映画]

トラップカードとしての北朝鮮


「いやーあの出汁巻き玉子、よかったねえ。旨味があふれるとはまさにあれ」

「中心が熱くてね。あと最後の泡盛も面白かったです」

「ね? あの通りのあの位置で長続きしてて、気持ち微妙に高そうな和食系。ずっと何かあると思ってたんだよ」

「前から言ってたね」

「位置から逆算するんだよ。通り1本か2本、面倒な位置で…」



小池都知事はさ、前任者やその部下たちの弱点をがんがん追求して、いよいよもう刃が喉元にふれた、頸が落とされる、というところでフッとやめて、とどめをささない。ああいうのが上手い。あれは暴けば汚く後ろ暗いものがぞろぞろ出てきて、たぶん相手方は連鎖的にごっそり吹っ飛んだと思う。でもそこまで追い詰めておいてから、スッと追求をやめて、吹っ飛ばさない」

「なるほど?」

「ふっとばしたら終わりだが、刃をつきつけてから生かし続けておけば、その相手はトークンなりカードなり、使い続けられるというわけか」

「あれはナポレオンみたいなというか、そういうのがやたら上手い。今度の動きはどうかな」

「そのへんさあ、今、ちょっと思いついてきてることがあるんですよ。聞いて」

「ほう」

「どんな」



「これは、赤ワインみっつめぐらい飲んでて脈絡がつながるようなエスパーな話で…だから…脈絡のつながりが細くてもエスパーしてほしいんですけど」

「うん。妄想的な話ね」

「まず、ここのところしばらく、北朝鮮ロケットマンアメリカ大統領とがメンチを切りあってますよね」

「やんのかこら、やんのかこら、おぅウ?↑ おぅウ?↑↑ だね」

「そうそう。それで、あのメンチの切りあいは、やってればやってるほどアメリカが損をしてるんだと思うんですよ」

「なんで?」

北朝鮮はさ、言っても国としてはちんぴら格なわけですよ。対してアメリカは、いくつもの軍事同盟の盟主、いくつもの舎弟を従えている親分格です。そうすると、ちんぴらと親分が直接、メンチを切りあっていたら、親分のほうの面子が安くなっていく。『親分さんよお、手が出せねえのかよ。俺ごときちんぴらに手が出せねえとは、大した親分さんだな、お安いじゃねえか』となる」

「ふうむ? じゃあ、逆に、なんでアメリカ親分はちんぴらに手が出せないんだ」

「それはちんぴらのすぐ後ろに、実は中国親分がいるからなんですね。なにしろこのちんぴらの家の裏口は中国親分の事務所と溝板一枚渡るだけでつながってて、事実上出入り直通なんです。あくまで違う国ではあるけれど、物も人も金もすいすい行き来できて、いざ殴り合いとなったら中国親分の事務所から組のバッジを外した若い衆をじゃんじゃん送り込める。70年前の朝鮮戦争で、中国は100万規模の『義勇軍』を投入して、米軍を38度線まで押し戻した。あくまで『義勇軍』であって中国軍じゃないよ、これは中国の戦争じゃあないよ、盃交わしたわけじゃないよ、とシラを切って、国境からこっちの本国は安全なままでね」

「そんなバレバレなの通用するの」

「これが実際通用するし、したんですな。というのは、おまえ中国じゃねえか、直接この中国を殴って手を引かせてやる、と考えてみても、じゃあ中国親分の本土に殴り込みたいのか、というのがポイントになる。北朝鮮を越えて、中国本土を攻撃するとしたら、広い中国のどこをどれだけ殴り取ってから交渉に入るのか。どこまで殴り取ったら取引材料が足りて手の打ちどころになり、講和ができるのか。これはかなりわからない。殴り合っているうちにどちらかの、あるいは互いの国の世論が盛り上がってしまい、講和を認めなくなるかもしれない。事前に計算できず、リスキーです。あるいは講和なんてケチを最初からいわず、中国全土を殴り倒す大作戦にとりかかろうというのか。どれだけの大戦争になり、どれだけの兵力と予算をつぎ込むのか。しかもそこにロシアが中国側についたりしたら似たような構図がさらに広がる。そんなリスクと兵力と予算を、たかが朝鮮半島の北半分のために投入する? アメリカの議会からすれば、朝鮮半島なんて地球の裏側の、経済的にもさほど興味のない土地です。大統領府が議会に予算を出すよう説明するにあたって、費用と利得が釣り合わなすぎだろう…」

「史実でも、現場のマッカーサー将軍は中国本土の攻撃を主張しはじめて、更迭されたしな」

「えー? なんかイカサマな話なかんじがするけど」

「実際、一種の妙なトラップみたいなパターンともいえます。アメリカは北朝鮮と戦い始めることはでき、そこに増援された中国義勇軍と戦い続けることはできる、が、中国本国と戦い始めることはできない。そして中国にとって北朝鮮はすぐ隣なので戦力をつぎ込みやすく、つぎ込む価値も高いが、アメリカにとっては遠いために戦力をつぎ込みにくく、またつぎ込む価値を議会に説得できない。なので中国が持久戦に持ち込めば、いずれアメリカのほうが先に諦める。このパターンはベトナム戦争でも繰り返されて、中国とソ連が比較的気楽に北ベトナムに支援をつぎ込み、アメリカはそのふたりの親分に殴りかかるほどの覚悟は持てなかったので、けっきょく負けた。このときのアメリカの振る舞いは朝鮮戦争の経験から、『中国の義勇軍投入を引き起こさないていどに勝つ』という混乱した動きになっている。妙なはまりかたをしやすい、ひねり鈎のついたトラップなわけです」

「うーん。本当かなあ?」

「やくざにとってちんぴら、盟主国にとって緩衝国が、どれほど便利な『トラップカード』であるか、というわけだな」

「そうそうそれ。トラップカード。あきらかに弱そうなのに、踏むと非直感的な効果が発動して高確率で負ける。大きく負けるわけじゃなく、あくまで小さな負けだが、逆にいうと小さいからこそ負けを受け入れなければならないという合理的な得失計算の立場に置かれる」

「なるほど、一見踏めそうだが、踏めない。じゃあそうだとして、そうするとどうなる」

「メンチを切りあってみたあとで、相手がトラップカードだったことに気づき、踏めなくなる。そうすると、親分がにやにや笑顔で登場して、ぬけぬけと言ってくるわけですよ。


『いやあ、乱暴者がいると町内が困りますなあ。私もこいつには少し縁があって、つねづね叱りつけているんですが、とんと言うことを聞かない。しかし、こいつも性根は良いところもある。決めつけて暴力的な解決はいけません。話し合いで解決しましょう。関係者(もちろん、私を含めて)でよく話し合って、全員が納得できる落とし所を見つける。これしかありません』

てなところで、これで謎の事業基金とか謎の投資プロジェクトとかを作り出して、金なり何かリソースを出させ、そこから割前をちんぴらも親分も獲得する。美味しいです。いまの場合だと、中国が『つねづね叱りつけている』役、ロシアが『話し合いで解決しましょう』役と、2役に分かれてやっているようで、少しテクニカルですね」

「ふむむむ」

「ズルい。アメリカも使おうよトラップカード」

「そう、そこだ。置きたいですよねこのトラップカード。これがですね、本来は、それがあった。韓国がそれなはずなんですよ」

「ん?」

「韓国が、アメリカにとっての緩衝国だったはずなんですよ。北朝鮮が、やんのかこら、とメンチを切ってきたとき、やんのかこら、とメンチを切りかえすのは韓国の仕事だったはずで、この2国がそれぞれを威嚇しあって拮抗するのなら、中国もアメリカもどちらの親分も安全だった。ところが、今回、韓国は北朝鮮にさっさと経済援助を申し出てしまい、メンチを切らなかった。あくまでアメリカ親分につきあって演習してるんですと。なのでアメリカ親分自身がツイッターでメンチを切るはめになっていて、ちんぴら相手に手が出せず、面子がつぶされている。これ、どうして韓国のいまの大統領がアメリカ親分の統制を脱したのか、ちんぴら役を拒否できたのか、これがわからない」

「わからないのか」

「まだ僕のエスパー能力が足りないんです」

エスパー能力に頼るのがそもそも道を外れているのではないのか」

「まあまあ、ここからが聞かせどころがありますから。われらが日本の傑物、女ナポレオン、小池女史がもうすぐ登場します」

「おっと」

「つまり、ここで、韓国がメンチを切らないから、アメリカが直接北朝鮮とやりあわなければならない。じゃあここにかわりにひとつ国をはさみたいですよね? それはあるじゃないですか。日本です。われらが日本。日本がメンチを切ればいい。だから、とりあえず安倍総理は何度かメンチを切ってみせました。忠節な、アメリカのブルドッグといった献勤です。だが迫力が足りない。メンチを切るための、自他の流血をいとわぬ迫力が。世界第10位の軍事予算の刀を持っていても、紐で縛りつけられていて鞘から抜けないのでは血は流れません。だから、この紐を断つか、それが通らなそうなら、一時的にでもほどけるようにする必要があります」

「刀が自衛隊、紐が憲法第九条、一時的にほどくのが緊急事態条項、という見立てか」

「ザッツイット!(両手でスナップを鳴らしてから指さす)」

「まあもっと飲め」

「これはどうも、頂きます。それくらいで…それくらいで」



「いやあ、うまいですね。バニラ香めちゃ推しで。アメリカ人、ワイン作るの上手いですよね」

「それで?」

小池都知事が活躍するんじゃないのか」

「ああ、はいはい。そう、それでここで、刀が抜けずに困っている、迫力不足の安倍総理に、小池女史が語りかけるわけです。


安倍さん、私が貴方と戦う新党を立ち上げます。人々がどちらの味方をするかはわからない。でもこのドラマチックなストーリーの力に、人々はあらがえない。勝つのは貴方か私のどちらかになる。勝ったのがどちらでも、その勝利による人々からの祝福を受けて、刀は抜けるようになる。

100のうち100がこれだとやはり、陰謀論すぎるかな。16くらい。総理と都知事の動きの理由が100あったとして、そのうちの最大16ぐらい、多くて16%ぐらいがこんなかんじではないでしょうか」

「泣いた赤鬼じゃん」

「最大で16%? 多いのかそれは」

「僕のエスパー能力は最高に当たってそんなところでしょう。この16のうち、8がアメリカの謎のやり手、8が日本会議だかどこだかの謎のやり手というかんじでしょうかね」

「謎のやり手なんて居るのか? エスパーが当たっていたとしても、そんなアメリカに言われたとおりってのは、僕は気に入らないね」

「ああ、いえ、日本会議の謎のやり手も、ただ自衛隊を使わせろと言われて従ってるわけじゃないと思うんですよ、そこはたぶん。人間そうは動かないと思うんで、何か、刀を抜き流血を担うこととひきかえに…たとえば『東アジア方面で(アメリカの次に)一番いばっていいよ、栄光のナンバーツーだよ、若頭だよ』とか。そういう取引。韓国やフィリピンなんかに対していばっていい」

アメリカがいいって言っても韓国フィリピンが納得するとも思えない。フィリピンは中国と仲良くしようという節もあるし」

「『屈辱の戦後』からの脱却…的ななにかが取引材料な気がする」

「取引でなんとかなるものなのそれ?」

「なんだろうなー でも誇り高い日本人のロマンティシズムを満たす取引材料なはず…『名義上、日本が盟主である西太平洋軍事同盟』とかかなあ…? フィリピン、ベトナム、オーストラリアなんかと組んで南沙諸島とかで中国と張り合う同盟。その同盟内では日本が筆頭で、一番偉い。これは気持ち良いですよね。セットで貿易条約と、合同採掘プロジェクトでの資源分配もする。これで日本も資源国だ。その日本をアメリカは安保条約の手綱で握る。アメリカ組の、東アジア若頭だ」

「東アジア若頭」

「これは、安倍総理にしろ、小池女史にしろ、その代で到達できるかは不明な目標だ。もう数代後かもしれません。しかし、謎のやり手が目標にできるくらいの中期的な課題であり、そのための突破口を開いた政治家は、たとえ紐を一本ほどく以外になんらの功績を残せなかったとしても、かれらにとっての英雄となり、どこに行っても下に置かぬ扱いを受けることになる。謎のやり手は、そのために暖かく迎え入れる椅子を用意してある。気持ちよく昔話を喋れる講演会とか。だから、何十年も長期的に権益集団間の利害調整をちまちまし続けるような政治家をやる必要はない。いろいろ派手なことを言い出して現場に命じ、後手に回らせておいて、ドラマチックなストーリーにする。それらの煙幕に隠して本命をひとつ通したら、あとはなんか格好良く見えるタイミングで劇的に辞任すればいいわけです。途中のままのプロジェクトがあれこれ残るが、それらは現場にあと始末させればいい。こういう短期的に勝ち逃げする踊り方をするなら、自分が手札を持っていなくても、空中の無から取引のカードを作り出して対手をひきずりまわすことができる」

「(寝息)」

「ここしばらく科学立国とか本気でするつもりがなさそうなのとか、沖縄を社会感情的に切り離そうとしてるのもこのへんかな…地理的、人員的な前線が血を流すことを負担できるようにするには権威主義が要るし、国家というデッキを権威主義寄りに調整中なんだ…さしずめ目指すは《同盟の盟主》デッキか…」

エスパー能力を使いすぎると、どうなるか、漫画で読んだなあ」



spcateg政治[政治]

ドリーム/ヒドゥンフィギュアスの感想


「ドリームみたよ」

「良かったでしょう。ヒドゥンフィギュアス。四つの戦いが並走して全部勝つ、一二七分四勝。プロットぎちぎちで、無駄もだれ場もなくがんがん進む」

「普通に脚本書いたら、あの三人の話をつなげて、たとえばオイラーの公式の話をしておくとか、fortran言語の話をするとかできるのに、やらない。カッコいい」

「そういうのないですよね。というのは、より抽象度の高いレイヤーでかれらは助け合ってる」

「ほう」

「既存の閉ざされた扉を、どうにか隙間を通っていくことで、『そういうこともあるか』と前例化していく。そうして前例を作るとその後の者が通りやすくなる。実際、あの三人のうち、一人目がスペースタスクグループに入ったことで、二人目、三人目はやりやすくなってる。」

「あーそうか」

「この映画なかなか面白いのが、かれらの間で具体的な専門技術、技法での助け合いや、落ち込んでいる個人を励ましたりとかいったことは、きっとあっただろうと思うんですが、そのレイヤーでの助け合いの描写をしないので、抽象度の高いレイヤーでの『前例を作ることで互いを助けるんだ』という関係が強調されていると思うんですよね」

「ははあ。そのへんからがあの三人の距離感、なんというか、ウェットにならない関係になるんかな」

spcateg漫画/アニメ/映画[漫画/アニメ/映画]

ムスカがいかに悪役として優秀か

 ムスカの悪役として優秀なのは、若僧であるところである。物語における悪役は、強大でありながら、主人公たちに打ち倒されうる隙を備えていなければならない。狡猾でありながら間抜けであり、チェックメイトをかけながら説得力ある負け方をしなければならない。これは矛盾しやすく、難しい問題である。水も漏らさぬはずの一大犯罪計画に小学生でも気付く穴があって小学生たちに崩壊させられたり、悪辣非道の残虐帝王がヒーローの馬鹿丸出しテレフォンパンチにノーガードな接待プレイをして負けたりする。

 ムスカはこの問題を動的に解決している。

 つまり序中盤、「ムスカが主人公たちを抑えつける→突発事態が生じてアクションシーンに→ムスカが事態に臨機冷静に対処し立場を強める」という展開が繰り返される。ここではムスカは狡猾で、アクションシーンが一段落したとき、つねに得点を増やしている。得点が増え立場が強大になっていき、倒されるべき悪役としての格が上がっていく。にもかかわらず、冷静度は逆に下がっていき、将軍との対決を境に怒涛のヒステリーを爆発させ、敗れる。

 言い換えると、何を考えているかわからないゴルゴは強く、ゴルゴに追い詰められて退場5秒前の死に役は心のうちをべらべら喋ってから死ぬ(内語と主人公の優位)。序盤、冷静で正体不明な悪役が、手の内をさらしていく(呪文を知っている筈だとか真の名とか読めるぞとか)ことで立場的には強くなるが内語(精神的物語構造)的には弱くなって負ける、というつくりである。

 カリオストロ伯爵は最初から一国の領主であると同時に一大犯罪組織の運営者であるので、この冷静・ヒステリー・敗北の三段活用にやや説得力を欠く。特に時計塔に入ってからはトバしすぎで、指輪やクラリスにそんなに価値があるのか? という疑問が生じる(唐沢俊一『B級学』)。その点、ラピュタには世界を制する大きな価値があり、さらに、軍という組織的暴力(理性による指揮)によって主人公たちと対立していた悪役が、逆にその軍(人間集団)を排除し、個人として強大な力を握る、という図式の不安定さが、ヒステリーに説得力を与えている。

 ある意味で、急激に力を得た若僧の(あらまほしくない)成長物語が、ムスカである。だからやることが怖くて詰めが雑で負け方はみじめである。



(2003.08.22 指輪世界 ityou)

spcateg漫画/アニメ/映画[漫画/アニメ/映画]