TRPGのゲームマスターの情報管制
テーブルトークRPGのゲームマスターの醍醐味は何か? 思うに、情報管制がある。
TRPGのゲームマスターの楽しみは、オリジナルな自分の世界と物語を見せうることである、という説明を聞いたことがあったが、的からけっこう遠く、言い得ていないと思う。そういうのは、TRPGのゲームマスターよりも、物を書きあるいは描くののほうが、ずっと的に近いようである。
TRPGで運用される物語というのはそれ自体オリジナリティの高い、新規性や意外性のあるものである必要はない。むしろ凡庸さをきらい新規性や意外性にこだわったため、筋の悪くなる場合も多い。いわば、TRPGでゲームマスターが提供する情報には、それ自体には、オリジナリティは求められない。ないくらいで、いい。
TRPGでゲームマスターがプレイヤーを駆動する力は、情報の新規性ではなくて、情報を提供する順番にある。コンテンツ全体の中から情報を適切に切り分けて与えて、プレイヤーの行動を引き起こす。その引き起こされた行動に対してまた、当意に適切に情報を切り出して与える。どんな順番で与えていけば、プレイヤーを強い勢いで進ませることができるか。意欲をひきだし、駆りたて、動かすことができるか。
そのように、情報を管制することによって行動を進行させることが、TRPGのゲームマスターに特長的な課題だと思う。
この課題は、じっさい、面白いし、ときによっては、実務的な技術でもありうる。
(追記)
なおここで情報と言っているのは、およそTRPGでゲームマスターがプレイヤーに提供するもの、ほとんどなにもかもにあたる。とりたてて謎解きやミッション達成に必要なフラグのことではない。登場キャラクターの設定描写やその容姿イラストのコピー、台詞や演技、情景描写などの演出、その他、見せたりしゃべったり並べたりするもののことである。