台詞と伝奇ものとバストアップイベント/アニメ版ペルソナ4
「うう。26:25〜とかよい子の起きてられる時間じゃないじゃないですか」
「あっ、ペルソナ4があるから、今日はその後で26:55〜だわ」
「もうこれ拷問じゃないですか。元気なお年寄りなら起きて来かねない時間ですよ。まあ、いいんですけど。じゃあペルソナ4から見ますか」
「はじまったぞ」
「つうかこの制服の模様描かせてる奴は大丈夫なのか…」
「縫い目が盛りだくさんですね。キャラクターデザインが弾劾されたりしないのかな。そんなこともないのか」
「なんだ? なんか芝居の進み方が」
「んー」
「なんかゲームならではのショック度の中規模なイベントの細かく続くテンポが」
「そうかわかったぞ、このアニメずっと喋ってる。誰かが喋ってないカットがない!」
「ああ? どういうこと」
「どのカットでも必ず誰かが台詞を言い続けている。台詞なしの表情や仕草、構図、サウンドで表現しようというカットがない。」
「あーそうかな」
「けっこう作画資源あるんだから、作画陣が表現してくれることを期待して、台詞なしの芝居に任せるシーンを作ってもいいのに、全く作画陣を信頼できなくて台詞で喋らせるしかないアニメみたいになっている」
「これ作画いいアニメに見えるのにね」
「背景もかなりかっこいいのに、キャラのいない風景だけのカットもほぼない。むあー。これさあ」
「ずっときゃんきゃんにぎやかだとあまり伝奇ものっぽくないね」
「これさあ、ゲームだと台詞こうなるんですよ。ゲームだと。」
「ああ、立ち絵のイベントだから?」
「そう、バストアップ絵のイベントで、ゲーム内のキャラは事実上ほとんど棒立ちのままで、構図も工夫できず、立ち絵の表情差分とエフェクトが多少使えるくらい… そういう条件下で話を説明・進行させるには、台詞に大きく頼るしかないわけですよ」
「台詞が絶対あると」
「イエスイエス。その意味ではゲームのバストアップイベントは、『ボタンを押して台詞送りすることが時間単位になっている』わけで、台詞を伴わない時間進行が存在しない世界なんですよ。常に台詞が表示され、それが読まれるのを待ってから、時間が進む。それくらい台詞に大幅に頼った表現をするものなんです。そうでしょう?」
「そうですか」
「ゲームだと、絵の表現の情報がおさえめになるから、そういうふうにじゃんじゃん台詞を使っても伝奇もの的空気が維持できるけれど、これはにぎやかすぎるなあ… ずっとにぎやかで情報が過多気味に供給されつづけているから、『それがなにか嫌な情報であることが薄々わかっていながら、その欠如している情報を求めていかなければならない』という伝奇ものの物語推進力が弱くなる」
「言ってみればゲームなら、求め進んでいくのはプレイヤーの能動的行為だから、それじたい君のおっしゃる伝奇もの的な効果を持っているのかもね」
「おっとバトルパートだ。しかし本当に喋り通したなあ。このアニメもしかすると、目をつぶって耳でだけ聞いても話が理解できるかもしれんですね、ラジオドラマというか。ちょっと飲み物取ってきます」
「あいはい」