指輪世界の第五日記。基本的に全部ネタバレです。 Twitter 個人サイト

マトリックスオブソレシェント

 マトリックスレボリューションズ見てきた。

 リローデッドの欠点が拡大されており無念。

 まず荒廃した世界の世界観がエイリアン分過剰。荒廃しててチューブとパイプの地下水道で、油汚れしたニット。敵もギーガー分高濃度。1作目で「うわあこれが現実だって?」という衝撃を与えるディストピアとしてはいいのだが、そこから2作ひっぱる美術じゃない。あんなザイオン守る気にならない。原始キリスト教カップル描写と、あとダンシングな生の肉体の美しさ描写を逐次投入しているが連携になっていない。

 地上の大部分はエイリアンでもいいから、きわめて狭いサンクチュアリがあって白鳥がとんでたりして何も知らんガキが水遊びとかしてるのを眺めつつ「ここだけは守り通さなくてはいかん」とか言わせるとよかった。

 次に敵が弱くなってる。1作目のイヤホンつけたサングラス黒服たちは怖い。それは組織的な国家権力(いや国家より強いマトリックス権力)だから、何しても見張られて追われて逃げられないっぽいからだ。そしてアジトに突入してくる警官隊も怖い。ぼくらを守ってくれる筈のまじめな警察官の皆さんが、無実の俺をテロリスト扱いして即殺しにきてるから。ところが2作目の双子はマフィアだし3作目ははぐれスミス純情派。背景組織の規模が縮小してる。本来、2作目3作目の敵はストライクイーグルやM1A1やカール・ヴィンソンでなくてはならなかった。拳銃片手にF15Eと空中戦。震脚一本空母まっぷたつ。これらは数年後の別の監督の課題として残った(対戦車戦はハルクがやってくれた)。

 トリニティはすっかり待つ女になり、連載が続いてしまった漫画の初代ヒロインモードだし、モーフィアスも赤青キャンディの二択をかけていた頃が嘘のような信ずる人。オラクルとフランス人とインドロリは要らない。司令官とナイオビはもっと要らない。

 司令官の非常識さは、EMPが当たれば威力どでかいのに罠かもしれんからゲート開けないとか、ありえん。いかにも一時のピンチ感を作るための浅さ。16だ18だとか言うミフネも。ザイオン全体でいえるが、種族滅亡の危機ってのはもっとみんな慌ててて支離滅裂に浮き足立った狂気じみた活気のモブか、渚にて並に音一つなく諦観した美しさがあってこそ楽しい。ザイオンでの戦闘もエイリアン2で見たから要らない。ただし弾汲みに行くのは楽しかった。

 トリニティの遺言はカップル対策で1分あってもいいけど(よくないけど)、ミフネはてきぱき死ね。オラクルもフランス人もハッタリ度の浅い話が長い。2作目でのアーキテクトのループ話は嬉しかったが、発展しなかったのが惜しい。

 死ねといえば、ネックレス渡して「私も戦うわ」とか言ってる女キャラは富野先生的死亡フラグ2倍でちょんぱ、坊主16才も死にたいみたいだからちょんぱ、司令官も副官もモーフィアスもナイオビもちょんぱして逆にミフネだけ五体無事に生き残らせたりするとすがすがしくも趣深いのではないだろうかと思った。ふむ。今まで「殺せば良くなるってもんじゃないよ」と思っていたけど、良くなるのかもしれない。

 戦いのゲーム性が低くなっている。1作目での電話を軸とした地下活動的「逃走と捕殺のゲーム」はかなり動いていたが、続編ではオラクル、フランス人、スミス、アーキテクト、鍵屋、インドロリらの利害関係と権力関係が不明で、各人の手札とチップと勝利条件が見えずゲームが働いていない(ザイオン内の利害関係は不明とか以前に対立していないことが明白)。1作目のオフィスやアジトやアパートで描かれた空間をいかした戦いも、荒廃世界のエイリアン地下水道の上も下も右も左もわからん戦闘に退歩している。

 そもそも、対立のヘソは、「機械に幻を見せられて電池にされてるのは癪だ」「でも地下水道の油に汚れた現実世界で聖戦も嫌だ」すなわち「真実のおかゆか虚構のステーキか」という問題である。だから1作目の裏切り者のヒゲはけっこう好きだった。あの肉、美味そうだった(裏切り者が食う肉ってなんか、いいよね)。機械は人間電池なしではやっていけないし、人間は機械なしのくらしが辛い。そこが話の主軸だったはずだ(なのに2作目でアーキテクトに人間なしでもいけるとか言わせちまって……それじゃ人間が滅ぼされてないのは機械のお情けってわけかい?ゲームにならないぞ)。その場合は互いを尊重するってあたりでまとまっただろう。スミスを第三の敵に昇格して対立話を落とすなんてスケールが足りない。

 どうせラスボスなら「わたしはこの世界を守らねばならん」とか言う合衆国大統領でももってきたらどうだ。大統領は一度ザイオンを見たうえでマトリックスを選んだ男、すなわち裏ネオ。能力互角。トリニティの元彼。そいつなりに人類の福利を考えている。モーフィアス(元師匠)やスミスを当て馬にして屠り、ネオに迫る。

 戦闘は、「戦場にパーティクルを散らせ」というパワー粉(香港映画で殴り合う時に四肢に振っておくママの手の小麦粉)発想が進歩し、雨中の対決。火山高と同じ表現法に至った。後ろ回し蹴りは見事。摩天楼は殴り合いを通じてもっと大破壊すべき。吹っ飛ばされたときは、あくまでビルにぶつかって止まるべきで、空中停止はNG。空中での加速も駄目で、あくまでビルか地面を蹴って飛ぶべき。ウォシャウスキー兄弟には天使のたまごでなく今川版ジャイアントロボを見せるべき。スミスにネオをぶつけて中和相殺するというAKIRAなプロットだがぐろぐろな映像にならなかったのはよかった。

 ドリルが変形して何するかと思えば、立ってもう一回掘るという「ドリルはドリル。掘る以外の仕事は邪念」な一途さやハンドメイドのRPGに足を吹っ飛ばされる柔さはかわいい。セラフは袖が余ってるとこが格好良い。

 大局観で言って、マトリックスのウリは現代アメリカ都市世界での国家転覆的ゲーム構造(真実を知るテロリストが機械の手先の体制と対決!)、および現代アメリカ都市世界でのウルトラ超人クンフー/ガンアクションであった。そこに回すべきリソースが余計なハッタリキャラの逐次投入とエイリアン世界ザイオン大戦とに注がれてしまったのが失敗である。





面白い日記

氷川竜介日記11月11日さらばマトリックス愛の戦士たちよ永遠に完結編

K.Moriyama's diary10月20日

夢物語内matrix g@me





今後に残された課題

第七艦隊と戦う

十傑集の走り方をマスターする(前傾、腕組み、横滑り)

指パッチンでビルを斬る

大阪城に変形して口からビームを吐く

spcateg漫画/アニメ/映画[漫画/アニメ/映画]