ゲームシステム内での2d6のロジスティック曲線
6面体サイコロ2個を振って出目と修正を足す、いわゆる2d6のダイス振りの偉大さについて、ここで触れておこう*61。
資源管理を主/副題とするゲームにおいては*rm、自分の手番に手持ち資源をどれだけどこに投入するか、そしてそれがどれほどの効果を発揮するかが、プレイヤーの考えどころといえる。ゲームシステムの側から見ると、資源の投入箇所をどれだけ配置し、それぞれの箇所がどんな効率で投入資源量を効果に変換するように設定しておくかが、デザインの考えどころである。
ここで有効なのが、ロジスティック曲線である(図1*lc)。右軸に投入した資源の量、縦軸にそこで得られる効果とすると、最初のうち、少ししか資源を投入していないうちは、ぜんぜん効果が発生しない。だが徐々に、そして一気に効果が生じはじめる。そしてグラフの右端で、やがて効果は頭打ちになり、やはり、いくら資源をそれ以上投入しても、効果は変わらなくなる*sr。
2d6の素敵なところは、生来このロジスティック曲線を体現しているところである(むろん、3d6や2d10も体現しているが、おそらく人間にとって、2d6振りにおける+1修正の重みが、ちょうど実感し/取扱いやすいのであろう)。
ロジスティック曲線とその他のシステムを組み合わせることで、命中判定、ダメージ算出、砲撃結果表、空戦結果表などそれぞれの投入箇所での処理を、好ましいシステムに構成することができる。好ましいシステムの性質とは、
A) その箇所に投入できる手持ち資源が4ポイントぐらいあれば、投入せよ。
B) 1~2ポイントしかないなら、その資源をその箇所に投入しても無駄である。その1~2ポイントはとっておいて、他の4ポイントぐらい投入できる箇所に追加投入せよ。
C) 4ポイントから注ぎ足して、5、6、7ポイント投入できるなら、せよ。
D) 8、9、10ポイントやそれ以上にしても意味がない。その分をとっておき、他に回せ。
こうして状況は複雑になり、人間が考えて判断を下しそこからの展開を見るに足るものになる。
実際、あらゆるゲーム中に登場するいかなる要素であっても、一定の条件が揃うまでは登場しない、つまりそれらの条件の一部だけが成立していても意味がない。またその条件が必要以上に達成されていたからといって、やはり意味はない。つまり非常に粗いもの(階段関数)ではあるが、ロジスティック曲線として捉えてよいのである*sf。言い換えると条件の設定の仕方やチャートの組み方次第で、ダイス判定なしであろうと1d20であろうと、この性質を実装することは可能である。だがその時、条件記述やチャートは読解しづらいものになりやすい。2d6は、人間が把握し処理するという観点から見たとき、それらを簡易かつ適度に細密に実装してくれる、ゲームシステムのJIS規格歯車であるということだ。
[61] 2d6の偉大さ
ロジスティック曲線生成機としての2d6については本論で述べるとして、パーセンテージダイスとの比較をしておく(参照:第一日記2000年01月24日)。2d6では、駆け出し同士の戦いと、達人同士の戦いが、どちらも2d6+スキル値という、達成値の比べ合いで処理することが出来る。そのとき、武器や環境、攻撃オプション等の修正は、同じように機能し、+1や+2といったスキル差や修正が、非常に大きな意味を持つ。
ところがパーセンテージダイスでは、10%対15%というヘボ同士の判定や、85%対90%といった達人同士の対戦では、わずか5%程度の差しかつかないし、+20%などの修正が来ると、その差の何倍もの効果を発揮してしまう。別の言葉でいうと、90%の達人より強いのは95%で、その一枚上が98%で、しかし彼らの間にぜんぜん差が感じられず、山奥で拳法の修行を積んでも意味がない。
「それならば、能力値やスキルを5~30ぐらいにしておいて、「能力値の何倍以下の数値を出したかを達成値とし、その達成値を比べあう」などとすればよいではないか?たとえば、基本25のところ48を振ったから達成値2で、基本32のところ15を振ったから達成値0.5で、その差は2レベル……」 なるほど駆け出しも達人も扱える。だが問題はその手間と、パーセンテージダイスを振る本来の意義がパーセント表記の一度振り(そして判定は成功失敗のみ)にあることである。
[rm] 資源管理を主/副題にするゲーム
たとえばカタンは、木や鉄や麦といった資源を、家や道やカードといった別の資源に変換する、その変換とタイミングとが軸となるゲームであるといえる。
大貧民など、それぞれの固有性があまりに高い、たとえばスペードの2というカードはプレイ中に1枚しかない、ようなゲームでは、それらのカードを資源とみなすのは適当ではなく、そのため、資源管理ゲームとみなすのはやや不適である。
[sr] 頭打ち
頭打ちになることを、その筋の言葉で、サチる(saturateする/飽和する)、サチってる、などという。
[lc] ロジスティック曲線
S字曲線、あるいはシグモイドカーブとも言う。
[et] 類のものである
例題:
命中判定 2d6+攻撃スキル 対 敵回避力 ここで敵回避力:11 敵回避力以上で命中、ただし6ゾロは絶対命中
ダメージ算出 1d10+損害スキル−敵防御力 ここで敵防御力:3 0以下は0
解説:命中判定の2d6ロジスティック曲線と、1d10の(ほぼ)直線との、乗算。伸ばすスキルの切り換わり具合がかわいいところとなる。実際には、レベルアップの必要経験値が指数気味に上がっていくし、成長に沿って対戦する敵の回避力/防御力が上がっていくので(そしてその他の要素も)、このような精確な条件では考えられず、もっと複雑怪奇な判断に基いて行動することになり、つまりゲームになる。
[sf] 捉えてよいのである
逆の言い方でいえば、そのような階段関数/ロジスティック曲線的効果を生じない要素は、ゲーム的意味を持たず、システム内に存在する必要がない。したがって構想段階、デベロップ段階で排除されているはずである。
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