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陣取りマルチの呪いとプエルトリコ礼賛

 先日ソードオブローマというアメリGMT社新作の共和制ローマ勃興期4人ゲームを遊びました。紙とコマとサイコロで遊ぶやつです。

 マルチプレイヤーズゲームは近年、ドイツでの発展が著しいですが、ソードオブローマは正面からの陣取りマルチで、陣取りマルチの問題点がまっすぐ表れています。マルチゲーにはトップ叩きがつきものですが、プエルトリコその他では相互作用を複雑にからませて、トップをわかりにくく、また同時に叩き方をわかりにくく、あるいはトップのできかたをわかりにくくしています。どのようにトップが流れるかがわかりづらいために、こいつがトップになるんだから叩け、という話になりにくいのです。ドイツゲーのトレンドです。

 陣取りマルチは、この面にすごいハンデがあり、つまりトップがわかりやすいし叩き方も明白。陣地の広いプレイヤーが次ターンにもっとも収入を得て、もっとも成長します、つまり、正のフィードバックをあからさまにします。

 したがってごりごりのバランシングゲームになりやすい。出る杭を打ち、それがへこんだら次に出た杭を打つ。(トップ叩きについては第一日記1999年12月11日参照)

 サドンデス勝利条件を満たさせないように、こっちを殴りあっちを助け、互いにシーソーのバランスをとりながら最終数ターンまで続けて、そこのラストダッシュで決める。そしてその間、どれだけ「サドンデスの隙」を許すか? けっこうゆるめにやって自分の利益も確保し、サドンデス勝利による途中終了もまたよし、という態度をとるか、自分を捨ててガチガチにおさえ、最後まで遊ぶか… ここらへんがストレスフルです。

 陣取り的な国家興亡テーマをモチーフとしていても、このトップ叩きバランシング問題を回避しているゲームシステムもあります。成功しているゲームを例にあげるなら、アバロンヒルシヴィライゼーションブリタニア、エポックの戦国大名などが指せます。

 シヴィライゼーションは都市数上限と文明進歩主体で陣取り性を下げています。最大で9都市で、毎数ターン程度に起きる災害でそれが崩れ5都市とか3都市とかになり、復帰させることになります。文明を進歩させるためには各ターン、できるだけこの都市数を維持することが必要。つまり拡大よりも維持が重要になる。正フィードバックが微弱です。

 戦国大名でも災害の役割を大きくしてあり、天命札の天災イベントで極端な損害が出るためにバランスが大崩れしたところで一気に勝負をつけさせるデザイン。ある国が傾いた瞬間に鋭くつけこんで自国領をのばし、袋叩きバランシングされて天秤が戻ってしまうより先に短期間で押し切れというわけです。

 ブリタニアでは毎ターンあらたな民族が勃興して旧担当民族はNPC化し、新規にわりふられた民族の勝利得点地点を目指して進軍し蹂躙伸張していくというシステムで、正フィードバックを断ち切っています。これはヒストリーオブザワールドなどでも採られている手法です。

 というふうに、工夫して陣取りのバランシング問題を回避するゲームも多いのですが、ソードオブローマは正面から、まっすぐにハンニバルシステムを4人にしたかんじでした。ハンニバルは2人対戦で、カードドリブンによるゲーム性/史実イベント取込の両立に成功した古典ゲームですが、4人だと自分にからまないプレイ時間が多くなるし、なかなか…

 ローマがテーマなら、独裁官が代替わりするたびにローマ担当プレイヤー、およびローマを取り囲む各民族の担当プレイヤーをずらして、各代ごとに得た勝利得点合計を競うとかいった、ブリタニア的なゲームシステムで組んだりしたら面白いんじゃないかしらん?



 ちかごろ、わがボドゲー仲間に熱心な新規面子が来たのですが、彼がはじめにやったのがプエルトリコ。そして以後、いろいろ紹介してもやっぱりベストはプエルトリコ。という微妙に困った展開になっています。

 プエルトリコは、あるプレイヤーのターンに彼が選択した行動、たとえば建物建築なら建物建築を全プレイヤーが時計回りに行います。つまり1プレイヤーが選択をおこなう時に、毎回それに付随して全員に選択岐路が与えられるようになっています。これによってプレイ密度が非常に高くされています。また、貨幣、生産物、建造物、労働者、勝利チットといった資源の相互依存関係が巧妙に絡めて作られているため、選択の結果がどう影響していくか、波及していくかが、きわめてカオティックになり、見通しづらくなっています。乱数要素がほぼなく、決定論で進むにもかかわらず、予言困難。2002年に出版されたときは、これからこんなゲームばかりになるのか、ドイツゲーは凄いなとびびりましたが、以後いまだ同クラスのゲームは登場せず凄いのはプエルトリコなのだということになりました。

 第一印象では他人を叩くことのない、自分の手元を育てるゲームだと思いましたが、プレイを重ねるうちに叩き方がわかっていきました。ダメージがいくのがドミノの二〜三枚先のまわりくどいパンチなこと、そのパンチによっていくつもの波及効果が他のドミノを倒し始めること、このへんが肝です。2時間遊んで、決着してから感想戦を2時間しゃべったりします。勝因があそこ、いやここ、あれが敗因、いやそこ、などといくらでも理屈をつけうる。深く理由を遡ればなんとでも遡れる。哲学の言葉では、いろんな解釈を引き出せる豊かな叩き台をノエマというそうですが、このゲームの展開はとてもそれです。

 モノポリーからヒストリー、マーチャントオブビーナスやコスミックエンカウンターを回し、カタンを経てプエルトリコに至ったマニア気味のわれわれとしては、プエルトリコの優秀性こそ奇跡なのですが、いきなりプエルトリコから入った彼にはアクワイアもラーも乱数頼みなり展開狭しなり、くすんで見えるようです。幸不幸といったところです。



Diplomacyと陣取りマルチの呪い-解呪- mihai0alienさんの日記

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