指輪世界の第五日記。基本的に全部ネタバレです。 Twitter 個人サイト

決闘くんと対話くん

 文章さんにあらたな敵キャラが。その名は決闘くん。連綿果てし尽きぬ相互引用、コメント欄の巨大化、大盛り上がりの掲示板……昔の言葉でいうFlamingを司るキャラです。

 決闘くんは対話くんの兄弟ですが*dlg、彼と違って、表舞台で第三者の視線を浴びてこそ意義ありと考えています。よく往来に出て、聴衆のいるところで活躍します。

 うちの文章さんは決闘くんをかなり嫌っています。対話くんで十分だという考え。最近は決闘になりそうな雰囲気をちらとでも感じたら、メールで「対話くんに替わってくれる?」と頼むようにしているようです。

 決闘くんの面白さは、主張の差し合いをして、行儀作法の守れなくなったほうの負けという、ゲームの楽しさです。文章レトリックによるディベートのゲームです。これはかなり複雑でおもしろいゲームといえます。しかしここでは、そういうゲームをするつもりの書き手が、そういうつもりのない書き手に、つもりがないふりをして仕掛ける、という問題が発生します。というのは、想定される第三者の勝敗判定基準では、ゲームの勝敗を楽しむためにかりそめの主張を掲げる書き手は、卑怯者で贋者で、負けるからです。ゆえにほとんどの場合、ゲームをする意図が表明されることはなく、掩蔽されます。

 雑に言って上記のような構図を理解していない書き手が、腕を突き出されて反射的に引き手を掴んでしまうと、泥沼の柔道のはじまりとなります*jd

 こうした決闘は、ゲームをするつもりのほうは面白いでしょうが、つもりのない書き手や、つもりのない話を読むつもりの読み手は、困ります。決闘くんの生成する文章群はとても読みづらいのです。相手の理屈を否定した次の瞬間に、言い方をかえてその理屈を繰り返してみせたりする。体系をぴょんぴょん跳び変える。あるいは10段落前の話題を蒸し返して、そしてまたそれを10段落後に持ち出して、それを10回繰り返したりする。

 あと決闘くんは、理屈くんが「そういえば、こんな話を思い出した」とか口を挟むと、話逸らすんじゃねえと怒り出すのがよくない。そこが対話くんと器が大きく違うところです。理屈くんはそういうところで決闘くんが嫌いなのですが、別な見方でいうと、決闘くんが対話をかみあわせよう、かみあわせようとするので困るのです。理屈くんは理屈の目新しさを重視尊評するので、対話がかみあいすぎると都合が悪い。(建設的な議論の希少性:第一日記駄目だよ鉄っちゃん鉄道は。) さらに別な言い方で言えば、決闘くんの生成する理屈は理屈くんにとっては見慣れたものが多くて寝れる。

 決闘くんの魅力は、論拠となるいろいろな事実をあつめてくる事です。多面的、少なくとも二面的な資料があつまります。また、決闘くんの熱意は端倪できぬものがあり、朝早く起こしてくれたり、あしたまたここでな!ビルからダイブとかすんなよ!みたいな粗野な愛情があります。

 決闘くんは文章さん同様、各書き手の読文経験から形成され、各書き手の脳内にいます。彼は決闘文章の添削をしますし、すなわち彼は、文章レトリック相互大引用大会のレフリーでもあります。こう考えるならば、相互大引用大会の勝敗は各自の脳内で付くと言って良い。





[dlg] 対話くん

 本名パロール。相手との順位/優劣関係、話題の選択権の押し引き、雰囲気コントロール、リアル貸し借りなどを操る。文章さんは、対話くんが第三者への読みやすさを軽視しているところが気に食わない。いっぽう理屈くんは、対話くんがネタ元をたくさん持ってきてくれるので、よく一緒に映画を見に行ったりするし、頼りにしている。だいたいそんな三角関係と言えよう。

 つまり文章さんは、対話くんと付き合うと自分の字面が汚れると思っているわけで、どうにも気難しいことだ。具体的にはblogや日記や2ch形式スレッドでの意見の投げ合いの読みづらさ。第三者には理屈がすごく追いづらくなる。文章さんは、常に自分が不特定の誰かに読まれることを仮定して自意識過剰気味に生きているので、そこから、「対話は映画館後の車中かファミレスかメール推奨。そこで出た理屈をサルベージし、文脈外の読み手のために整理して文章化せよ」という御主張になる。



[jd] 理解していない書き手が反射的に引き手を掴む

 構図を理解していないということは、ゲームをするつもりがあるかないかは不定なわけで、だから実は、そういう書き手は決闘をしたいのかもしれない、やってしまえば楽しめるのかもしれない。引き手を掴むということは、やりたいという意思表明のスタンダードで、そのシグナルを無自覚に返した若さのほうが悪いのかもしれない。なんだかエロい話だ。そういうのは品が悪い。





今日の単語検索で当たった関連は薄めだけれど面白いページ:

北海道大会を終えて、地区代表となった生徒達へ。 高校のディベート部の先生? light side of the force のオビワンケノービって感じ

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今日の文章たん萌え


構図を理解していないということは、ゲームをするつもりがあるかないかは不定なわけで、だから実は、そういう書き手は決闘をしたいのかもしれない、やってしまえば楽しめるのかもしれない

 ここの「実は」のダブルミーニングが萌えポイント。

 書き手の意志が、蓋を開けてみたら実はやりたいのかもしれない、という、書き手の心についての「実は」がひとつ。もうひとつは、本論では理解していない書き手というのはみなやりたくないのだ、ということにして論じたけれど、精確には不定なわけで…という、理屈の脈絡の「実は」。このふたつをひとところに背負わせられたので誇らしげにしている一方、余人にはそんな細かい意識はヨクワカ( ゜Д゜)?ラン。そんな様相がかわいい。





参考:

Hatena::Group::Mohican「モヒカン族」を含むキーワード モヒカン族 決闘くん文化の一例。

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