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わからない時に抜本的治療をするといかれる

 現在の民主主義がうまくいっていないのはわかる。病症はいくつか見える。病因もちらほら見えないこともない。だが治療というのはややこしいものであって、見えれば治せる、病因を除去すれば治る、とはいかない。

 見えていてもなおどうすれば治癒するのかがわからない。ここは大事だ。というのも、社会をどう設計したらベストなのか、わかっていないからだ。どんな政治システムにしたらまともな国家意思を持ちそれを保てるのか。わかりたいが、今現在ぜんぜんわからん。そんな状態で見切り発車で抜本的解決を図ると、たいがい国家意思がいかれる。



 現状がうまくいっていないと不満を覚えた時、次に考えつくのは、有権者全員がかなり賢ければいいのに、という考えである。これは人間が政治的な知識を学ぶために投じられる時間の問題からして、根本的な解決はできない。たとえば僕が、28年間そこそこ歴史的興味を持ち、滅茶苦茶長い暇な時間を持っていてやっとこのざまだ。まともに働いている人にそんな暇な時間はない。たまの自由時間を全部学ぶことにつっこめと、期待するわけにいかない。



 世間は愚か者達でいっぱいだと嘆いたとして、その次には、理想的な少数の投票者に国政を任せればどうだという思考をしやすい。これがたいへんに危険だ。少数の集団が多数の権力の糸の根元に座れるようにシステムが改組されると、その玉座のあまりの強力さのために争奪劇がはじまって、そのせいで国家意思がいかれる。あるいは、争奪劇を起こさせないで抑え込めるような指導者はたいがいいかれているか、またはいかれたときに替えられない。フランス革命ロシア革命あたりで派手な例がみられる。



 民主主義の政党政治システムもそろそろ長いので、飽きてくる気持ちもわからいでない。だが政治は飽きたの新鮮だので考えるものではない。

 ややこしいことは面倒だ、とにかくなにかをしよう、しなければ現状は変わらない、うだうだ言っていては何事も成せない。こうした思向は危うい。

 前世紀初頭あたりでは、日本はちゃんと議会制があって政党政治体制だった。それが閣僚がほいほい暗殺されたり内閣がぱたぱた倒れたりでうだうだやっているときに、人々はこのままではいけない等と思った。そうして軍部の独走を喜び、政党政治を形骸化させ大政翼賛会で上書きして、大陸、次に太平洋と、壮大にペイしない作戦をした。

 西の方では、第一次大戦が終わったとき、戦勝国たちは負かしたドイツに非常に民主的な政治システム、ワイマール体制を押し付けた。このとき戦勝国たちは、あまりに高価だった戦争コストがくやしかったので("勝ったのになんで赤字なんだ")、ドイツに莫大な債務を負わせてびた三文ぐらいしかまけなかった。そこでドイツ人たちは算盤勘定を放棄してなにかしでかしたくなった。ナチスが第一党になったとき、ドイツ人にはそれでももののわかる連中がいて、二度目の選挙では議席を押し戻しているし、ナチス内閣になった1933年3月にも得票率は44%である。そこから全権委任法と他政党の解散が通って国家意思がいかれ、ペイしないことをしだすわけで、政党政治というのはそれくらいのものだ。

 民主主義というのは、みなさんこの政党政治システムがけっこう頑丈だと思っているかもしれないが、そこそこ脆弱でいかれやすい。病気を抜本的に治そうとして派手なことをするといかれる。

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