指輪世界の第五日記。基本的に全部ネタバレです。 Twitter 個人サイト

理屈くんvsたとえ

 文章さんは、たとえを使うのをあまりお好みにならない。というのは、その弟である理屈くんのためである。理屈くんの本領は理屈にあるが、たとえを使うというのは、その文章の理屈部分を、よそから借りてきて使うということにほかならない。それによって理屈くんのやる仕事が取られてしまう。

 理屈くんは、どちらかというとその文章が扱っている話題それ自体よりも、むしろ単語を並べつなげた順番、組み立ての骨格のほうに誇りを抱いている。話をなにかにたとえて済ます、理屈の骨格をありものを持ってきて済ますことは、彼にとって一種の手抜きであり、屈辱である。理屈くんの目的は、多少とも気の利いた、今までにない理屈の骨格を示すことだ。毎回そううまくはいかないが、望んでいるのはそういったことだ。

spcateg文章[文章]