ツンデレと情報戦
ツンデレ(ツンデレに「これって、間接キスだよな?」って言ったら)の魅力について。
人間は高度に社会的な動物であり、人間の神経系にとって、社会関係は、基礎的な課題である。
その課題の中でも、対人情報戦にあって、人が隠している情報を得ることは、胸躍ることである。
それはエンターテインメントメディアの多くで提供されている商品である。
しかるに、ツンデレ状況において、ツンデレキャラは、主人公に対して情報の隠蔽を試みており、かつ、それに失敗している。これが、まずひとつ、情報戦における主人公の優位であり、視聴者の胸躍る描写である。
そして、その情報じたい、「ツンデレキャラの主人公に対する好意」、すなわち主人公の優位であって、人々を嬉しくさせる。
また、主人公は、「「ツンデレキャラが情報を隠蔽するのに失敗したことを察知したこと」を隠蔽すること」に成功している。少しややこしく見えるが、情報戦には当然含まれる事柄だ。わたしが知ってるということを相手が知らない。これによって、相手側に主導権を渡しながら有利に待つ、という、受動的優位の立場を得ることができる。いわば、相手に先に踏み込ませた形であり、相手はそこからなんらかの、そしていずれも不利な、ムーブをとらざるをえない、そんな状態だ。
この場合のツンデレキャラのムーブは、一種の、劣位な、意地(「粋」と「萌え」)といってよいだろう。
ツンデレコンテンツにおいては、あとは、この状況を維持しながら、いかに多くのムーブを描写するか、という問題となる。
鉄壁の防御をととのえて、ムーブを待ち受け、観察し、その描写が商品である、という構図でいえば、古典的な愛・被愛関係と同様であるが(血縁・妹属性の不動性)、まだ、異なる点もある。
ツンデレ状況においては、ツンデレキャラが多少とも攻撃的にふるまわざるをえない立場におかれる。この攻撃的なムーブは、そのひとつひとつが将来に積み立てられており、いわば、貸しである。この点もまた、主人公の優位であり、状況が持続するほどに、大きな蓄積となる。