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TRPGのゲームマスターの情報管制 その2

 自分の持っている一定限の情報を、どんな順番で、どんなタイミングで渡していけば、のぞましい展開に駆動することができるか。web拍手でどなたかがおっしゃっていたように、ダムにたとえるのもいい。いわく、プレイヤーという羽根車が受け止められる水量には限度があるのだから、急激に大量の情報を与えてもそのまま回りはしないし、あふれてとりこぼされる事項ができやすい、等々。あるいは、押井守先生が『TOKYO WAR―機動警察パトレイバー〈前編〉』にいわく、


「事故?」

「かもしれないが、それが証明されない限り何者かの意思が介在したと考える方が自然だ。現にその場を離脱したF−16は現在に至るも帰還していない」

 しのぶが口にする疑問を新たな事実の提示によって否定してゆく荒川のやり口は、情報を独占する者がそれを利して人を説得する典型的な方法だった。

 聞く者を納得させつつ、それでいて必要以上の情報は決して与えない。

といった例で考えてみる手もある。まあ、そこまでかっこいいものではないが、理屈は似ている。人間集団を仕切る・率いるリーダーの立場とは違う、いわば、導く立場だ。



 TRPGの世界観サプリメントやシナリオを書き集めて市販する側、コンテンツディストリビュータとでもいうか、そうした衆らの仕事と、それを買ってゲームマスターをやる、ユーザーゲームマスターの衆らの受けもつ課題とは、けっこう筋の違うものである。コンテンツディストリビュータの仕事は、世界観や物語やデータを作り溜めてパッケージすることである。ユーザーゲームマスターの課題は、そのコンテンツをいかに上手に管制してユーザープレイヤーに渡すかである。

 この両方をやる人もいるけれど、両方を押さえられなきゃいけないってわけじゃあない。ユーザーゲームマスターのレベルが上がるとコンテンツディストリビュータにクラスチェンジしてそのスキルを得る…わけではない。

 すごいすばらしいサプリメントとか、シナリオとかを読むと、「こんなん作れねーよ、俺にはとてもとてもむり」と思ったりするのだけれど、でもそれはコンテンツディストリビュータとしての差であって、ユーザーゲームマスターをやるうえで怖気づく必要はない。

 ダムのたとえで言えば、ためる水そのものをゲームマスターが作り上げなければならないわけではない。やれば面白いかもしれないが、そこまでしなくてもTRPGは成り立つ。成り立たなくてはディストリビュータも成り立たない。分業だ。



 ちょいと余談になるが、市販のリプレイは、この意味でけっこう違う筋のものである。というのはすなわち、プレイとコンテンツディストリビュートとを同時にやっているからだ。魅せプレイなどともいう。リプレイのゲームマスターは、ディストリビュータゲームマスターだし、プレイヤーは、ディストリビュータプレイヤーである。出版物であり、市場をもち販売可能なのだから、まったくそこに引け目はない。面白いコンテンツを作って売り、買ってもらい、読んでもらう一手である。だが、ユーザーのプレイの指針としては、そこには、ずれがあるわけで、はじめたばかりの人に市販のリプレイを読ませて「まあ最初はこんなプレイはできないけどね」と言うと、いつかはあんなプレイをしよう、いつかはあんなプレイを目指そう、という指導になってしまい、けっこう怪しい。

 いにしえの『D&Dがよくわかる本』のリプレイを思い返してみて、市販リプレイは、遠くまで来た。コンテンツとしてはるかに発達している。一方で、ユーザーのプレイの指針は、雑誌か何か別のチャンネルでフォローする手がなかろうかと思ったりする。そのゲームを楽しく遊ぶために満たすべき下限のライン、ツボ、コツ、必要条件を伝えるチャンネルだ。

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