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無情レスラー伝/新世紀エヴァンゲリオン

 新世紀エヴァンゲリオンの新しい劇場版を観てきた。


 もしも、リメイク的でない話、旧作の続きとしてまったく新しい話をしたならば、それは旧作の知識をおさえておかなければおいてかれる話になってしまう。それを見たパチスロからの新規層は諦めて、今後二作目以降の展開についてこないだろう。

(1) パチスロからの新規層に対しては、旧TV版の基本設定とストーリーを紹介し、怪獣も抜かさずに見せ、今後二作目以降の展開から離れさせずに、ついてこさせる。

(2) 旧TV放映からのファン層は、勝手にTV版との違いに気付いて、クオリティの上がり方に感嘆し、ループ的な設定を読み考え遊び、楽しんでくれるであろう。

 今回の劇場版は、上記のような二正面作戦を、リメイク的なループ話でもって狙っているようだ。ややこしいことをするものだ。

 TV版と並べると、ある話で強烈な引きをしておいてから一週間待たせて、いきなり減速してみせたり、違うトーンの話に変えてみせたりという技ができなくなっているので、いくつかのプロットは展開が忙しくなっている。綾波レイとの距離等。

 街的(月夜埜綺譚)興味からは、クレーン、廃線、変圧器、スイッチバック等、見所が増えた。



 さて、今回見ていて、ミサトについてあらためて思った。ミサトは手札の少ないつらい子。

 ミサトには甥っ子を扱った経験がなく、年下の少年に対して切るカードがない。苦しまぎれにシンジに、同年代の男、彼氏へ切る手札を放る。年齢・立場差のある状態で歓迎会とか、はしゃがれても、それに対して少年から切るカードがないから場が回らない。風呂上りで褒められても含みがないから意味がない。

 一方、リツコ以上の司令官たちについて見てみると、S木が「八百長プロレス」という言葉を言った。最終的にはエヴァの中のおかあさんが暴走して倒してくれるんだし、前のループからの予言というイカサマな筋書きもあるわけで、興行のリングにレスラーが上がりさえすれば勝つ、と、ゲンドウたちにはわかっている。プロモーターのレベルでは、話はついているのだ。しかしそのことをレスラー本人には伝えないから、レスラーは「絶望的な戦力差、これは無理」「どう見ても一方的、ひどい目に会うことは必至」「そんなカードを組んだ事務所の態度が平然としすぎていて意味がわからない。どうなっているのか。俺は何か間違っているのか」「どうすればいい」とおろおろして、出奔して連れ戻されたりする。

 イカサマな予言では、条件を整えてリングに上がれば勝つよと話が通っているが、それまでのトレーニング中の事故などについては保証されていないので、事務所はレイの事故の時とかには真っ青になってうろたえたりする。

 指揮場面でのリツコとミサトの挙動の違いを見ると、リツコは「座っているだけでいい」「歩くだけでいい」などと言う。レスラーのピンチに「避けて!」と動揺し、回収・撤退のタオルを投げようとするのはミサトであり、この命令を、リツコが割り込んで打ち消して、粘らせる。このようにリツコは八百長プロレスについて知っているが、ミサトは知らされていない。ミサトは戦術レベルで有能だったのでセコンドとして他団体から引き抜かれてきたが、それはこの興行の体裁を整えるためであって、実際には刺身のツマであり必要とされていない。それで中盤以降だんだん仕事がなくなって暇になるので、事務所の内部資料を調べ始めたりしてひどい目に合う。世知辛い人生だ。



 シンジ、アスカ、レイというレスラーたちについてみると、前二者は、事務所の態度が無情で、子供の挙動に対して返ってくる反応が非常に鈍いので、どうしたら正常な応答が戻ってくるのか苦悶苦闘して、疲れ切ってしまう。事務所は筋書きの辻褄合わせに夢中であり、レスラーの重要度が低く、彼らのシグナルに反応せず放置する。後者は、異常を受け入れて、目をつむって言われるままに生きるが、それはそれで使い捨てにされてしまう。

 なかなか残虐だ。

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