情報とパクリ
「よく、パクリだパクリじゃないだとか言うじゃないですか」
「言うね」
「あれの境界線はどこだと思います」
「言ってみ」
「たとえば物語の中のある要素が、なんらかの意味を果たしている…ある台詞が、ある人物の同行者との決別を表現していた、とかだとしましょう」
「だとしよう」
「その台詞を他の物語で引用したとして、それが同様の意味、この場合、同行者との決別の表現になってしまっていたとしたら、境界線の中にとどまってしまっていると言えるでしょう。しかし同じ台詞であっても、文脈と状況が十分異なっていて、一定以上違う意味に到達していれば、それによって新たな意味、新しい情報を作り出し、境界線を越えられていると言えるでしょう。」
「その場合だと、ふむ、その台詞が同行者を引き止める意味になっていたり、あるいはからかいだったり、なぐさめの意味になっていたりしたら、いいんだと」
「そういうことではないかと。だから、パロディものは引用物を批評的な文脈の上にのせるので、たいがい境界を越えるものだし、同ジャンルの作品どうしで引用してしまった場合は、まずいことになりやすい」
「引用する文脈や場面の勝負だという話ね」
「ざっときっとそういう話だろうと。」