指輪世界の第五日記。基本的に全部ネタバレです。 Twitter 個人サイト

監察組織の大敗北/スターウォーズ

ジェダイハブコマンド!

「すごく雑に言えば神っていうのは、自分みたいなものですから。神が自分を認めてくれるかどうかというのは、自分にしか興味がないってことにかなり近くなる。そこには他人への責任という考えが非常に弱くなります。大雑把にはそんなとこです」

「フーム」

「じゃあスターウォーズの話ってのを聞いていいですか」

「では、失礼して…ぼくのかんがえた最強のエピソードI・II・III」

「うかがいましょう」



スターウォーズの話って、まず銀河共和国の共和制というのがあって、それが帝国の帝政になっちゃうという、政治的悲劇があるよね。」

「ですね、あのしわしわ議長がマッチポンプして内戦を演出して皇帝になりますね」

「その銀河共和国なんだけどさ、もともと、銀河共和国には固有の共和国軍というものは無かったわけだよ。」

「ほう?」

「共和国の艦隊や陸軍正規軍というものはなくて、共和国はジェダイ騎士団っていう監察官の組織だけ持ってる。ジェダイというのは倫理教育と隠密潜入に特化した、監査・監察役だよね。ハイパーFBI、ハイパーケンソルみたいなものかな? そのへん詳しくないが。で、そこに共和国固有の正規の艦隊、正規の陸軍戦力を持とうというのが、あのクローン軍なわけ。」

「共和国時代は、軍事力については有事のたびに、各構成員から供出していたと。今の国連軍みたいに。それ本当ですか?」

「それに近いんじゃないかと。それに対して議長は策謀を重ねて、共和国軍を作り上げる。で、ジェダイはこの共和国軍創設に乗るんだよね。もともとクローン軍はジェダイの偉い奴と議長がこっそりどっかからの資金で作っていた。」

「なにそれその資金。どこから出てどう見逃されてたのこわい」

「『サイフォ=ディアス暗殺!? ジェダイ黒い資金の流れ』てなところだな。ジェダイ騎士団は、このクローン軍の指揮官級におさまって、一気に実軍事力を持つ。それまでは監察組織だったのが、下部に正面戦力を持つようになる。これはたとえば、FBIやCIAが捜査中に軍に協力を要請する、とかのかわりに、陸海軍の指揮官になるようなものだ。政軍体制上、重大な変革だし、けっこうジェダイ連中はこれにノリノリなんだよね」

「一種の昇官ではありますよね」

「そしてジェダイ騎士団は、そこからさらに内ゲバで裏切られて壊滅する」

「オーダー66というやつですね」

「だからこれは、監察組織としてのジェダイの敗北なんだ。共和国の政軍制度を監査するのが本分なはずなのに、マッチポンプに惑わされて、職分を踏み越えて実戦力を持ってしまう。本来は舞台裏で陰謀を探りだすための組織なのが、表舞台に出てしまい、本分がおろそかになって、そこをやられる。」

「ふーん。それ、スタートレックにもちょっと似たエピソードがありますよ。カーデシア連合っていう大国があるんですが、軍部と諜報部の二大権力がある。それが、諜報部が秘密裏に艦隊を作っていて、それを大作戦に投入して失敗し、組織が壊滅するっていう。情報組織が軍事力を持って失敗する話。」

「何か由縁のある説話なのかな? もっとも、エピソードI・II・IIIのジェダイは、苦闘する善玉としての演出が強くて、それほどこういう描写が押されるわけではない。だから、アナキンの悲劇が個人の規模のものに見えてしまうきらいがある。もっと規模の大きい悲劇なはずなんだが。」

「ほう。アナキン。」

「エピソードI・II・IIIは、ジェダイたちの政治的失敗の悲劇として描きうるはずだし、したがってアナキンは、政治的悲劇の中で翻弄される天才に描けるはずなんだよ。抽象的で申し訳ないが、国家規模の意思決定の失敗の渦の中にのみ込まれてしまうお姫さまと天才の愛。ジェダイマスターズや政・官のパワープレイヤーたちが冒していく大規模な失敗によって、アナキンに彼からは理路の見えない強いストレスががんがんかかっていって、それが決定的に蓄積したときに、超爆発を起こして百人斬りモード開始で、カタルシスのある大殺陣になるはずなんだ。」

「はずはずうるさいですよ。そんなのプロット長過ぎで収まらないんじゃないですか」

「3本もあるじゃないか?」

「どうですかね。なかなか… しかし、大殺陣は見たかったなあ。『血迷ったかアナキン』」

「『おのが道行阻むを斬れぬ剣、すでに剣ならず。わが道にジェダイが立てばただジェダイを斬るのみ』」

「『よくぞほざいた』バーン(周囲のふすまが一斉に開くしぐさ。) アナキン不敵な笑み」

「はっ! だあっ!」

「いや、ライトセーバーは剣術の動きじゃないんですよ。左右からこうぶつける振り方で、腰は踏み込まない。この前、西洋チャンバラをやってる人たちのところへ見学にお邪魔したんですが」

「こう?」

「もっと手首で廻して、相手の体を狙うというより、相手の剣をどかす。ライトセーバーって軽いはずだけれど、殺陣の動きは、日本刀よりずっと重い、西洋の剣のぶつけあいの文脈が強い。」

「こうか」

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