離婚パスタ
本日はみなさんにユニークなイタリアンパスタのレシピをご紹介しましょう。
パスタ・アルディボーツィオ
このレシピをレストランや料理ガイドで見かけることはまったくありません。なぜかというと、理由があるのです。それは、このパスタを食べているときの姿がとても”みっともない”からなのです。
男性にしろ女性にしろ、このパスタを食べているところを見られたなら一度で幻滅てきめん、百年の恋もさめてしまいますから、デートのときなどはもってのほか。結ばれた夫婦や家族でさえ食卓に上げてはいけない”禁物”のレシピといわれます。残念ながら結婚生活がすれ違い、わたしたち別れましょ…となったとき、初めて食べることができる、離婚するときにやっと食べられるから「離婚パスタ」という、イタリアらしいユーモアあふれる名前ですが、離婚してでも食べたい?おいしいレシピでもあります。
仰々しい名前のわりに作るのは簡単な料理ですが、準備と食べ方に少しコツがあるので注意してください。
材料 二人分
パスタ カッペリーニ 一袋(500g)
塩、コショウ、スパイス
オリーブオイル ※料理油・サラダ油ではいけません
卵 2個
刻みにんにく、しょうが ※最近はチューブ入りのものが便利です
アンチョビー ※日本では使い切りにくい調味料です。なくてもかまいません
1)
たっぷりのお湯をわかし塩を加えます。
2)
パスタをゆでる前に飲み物を用意しておきます。理由は後で説明します。
また、食器や椅子、調味料そのほか必要になるすべてのものをこの時点で食卓の適切な位置に置いておくようにしましょう。
3)
お湯がわいたら、器にお玉で数杯ぶんお湯を注いでおきます。これは器を温めておき、麺の熱が逃げないようにするためです。
4)
麺をゆでます。
カッペリーニはごく細く熱の通りやすい麺です。麺同士や鍋に付いてしまわないよう、よくかきまぜましょう。ゆでている間に(3)で器に入れていたお湯を捨てておきます。
麺に熱が通り過ぎるといっぺんに食感が駄目になってしまいますので、1〜2本噛んでみてよいと思ったら、指定されているゆで時間より早いくらいでもお湯上げします。お湯上げした後も、麺には麺自身の持っている熱で熱が通ります。
5)
麺をよく湯切りして、それぞれの器に移します。
6)
オリーブオイルを二回りほどかけ、塩、コショウを十分振ってかき混ぜます。
さらにスパイス、刻みにんにく、しょうが、アンチョビーをそれぞれ加えてまぜますが、このとき、それぞれあまり均等にならないよう、あえて偏らせて味が変わるようにします。
卵を割り入れて、やはり均等にならないよう崩すていどにまぜます。
7)
出来上がり、ですが、出来上がりなどと言っている暇もなく即座に食べ始めます。
この「離婚パスタ」を食べるには、湯上げしてからおおよそ3分以内にすべて食べきらなくてはなりません。なぜなら、カッペリーニの「熱さ」と卵の「冷たさ」がとても大切だからです。
やけどしそうなカッペリーニの「熱さ」と、それに対する卵の「冷たさ」、この両者が熱が移ってそれぞれ同じ温度にぬるくなってしまう前に食べきらなくてはなりません。イタリアでは麺を噛み切るのではなく”のどで食べる”と言います。(2)であらゆるものをあらかじめ用意しておくのもこのためです。飲み物や調味料を取り出さなければならなくなってあたふたするのは、初めのうち、誰もがする失敗です。
電話や来客があっても決して応対してはいけません。同じくイタリアの言い回しで”カッペリーニを冷ます”という成句がありますが、これは人のたいへん大事な仕事を邪魔する・だいなしにしてしまう、という意味です。
塩コショウのほかに旨みのあるスパイスが必要ですが、日本では袋入りの塩ラーメンの粉スープを半分とっておいて使うのがちょうどいいようです。