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僕の考えた最高の翠星のガルガンティアその2

「おいす。何、ガルガンティア?」

「こんばんはー」

「なんで海賊を皆殺しにしたのかって話をしてました。3時間で第5点まできました。」

「レドは海賊が敵だって思ってるんでしょ。そういうシーンあったじゃない」

「え?」

「どこ?」

「2話のさ…Bパートの、貸して。ほら、ここでさ」


『海賊とは、敵か』

『まあ…そうね』

「ああ、はい、ここか。これは違うよ。第6点、この少女は銀河なんとかの命令系統のどこにも属していない」

「んー、第6点始まっちゃいましたか。」

「少女は銀河なんとかの兵士に対して命令権、兵権を持っていない。この兵士に敵を定義して与える権限がない。ひっくりかえしていうと、この兵士にも、少女の発言に基いて敵を新たに設定する権限がない。たとえば仮に連絡が回復して、本部から『なにに基いてその海賊という集団と交戦したのか?』と聞かれた時、『船団の代表者から敵だと言われたから』と説明したらアウトだ。」

「アウト?」

「その説明じゃあ、命令系統外の人物から指示を受けて、未定義の集団を敵と定義しました、という話になってしまうからね。そもそも、ある集団を敵と定義する権利、交戦対象を選ぶ権利こそが、一個の武装組織を支配しているということ、兵権なんだからさ。兵士は兵権を持っていない。兵権を持つ者に使われるように訓練された者こそが、兵士だ。その訓練の重要性にくらべたら、戦闘能力の訓練などは、兵士にとって二次的三次的なものと言ってもいい…」

「ああ、そうか! ここで『海賊とは、敵か』『まあ…そうね』という会話で、『兵士に新たな敵が定義された』と読む読み方があるのか!」

「なるほど、あー、そういう読み方か… なるほど… 僕の脳内エスパーによるとそれは違うね。兵士に敵を定義するというのは、そんなにちょろいものではない。なるほどな…」

「何だ、急に、ひとりでに納得したぞ」

「例のごとしです」

「兵士に命令するというのは、そんなセキュリティのちょろいものではない。たとえば、ある命令系統に中尉、少尉、曹長がいたとして(ホワイトボードに図を書く)、


少尉は『中尉が定義した敵と戦いました』と言える。   中尉 ─○→ 少尉

曹長は『少尉が定義した敵と戦いました』と言える。   少尉 ─○→ 曹長

逆に少尉が『曹長が定義した敵と戦いました』とは言えない。   少尉 ←×─ 曹長

この中尉と曹長との間には非常に大きな権限の違いがある。   中尉 ←(超えられない壁)→ 曹長

そうだね?」

「そうですね」

「あの場面で少女が兵士の敵を定義したのだとしたら、連絡の一時途絶と食料くらいのものが、すくなくとも中尉と曹長の間にある階級差をひっくり返すのに相当する効果があるということになってしまう。いったいそりゃどれだけ脆弱な階級差なんだと。きみらの権能の差は蒟蒻並みかと。そんな階級システムはありえない。」

「言い換えると、兵士というのを、なにか盲目的に命令に従うお稚児のようなものだと思っていてもいいかもしれないけれど、それならそれで今度は、その命令を与える立場になるのがそんな簡単なことじゃない。武装組織というのはそんなちょろい仕組みではない。」

「あーでも、そう読めるような、そう読み取らせられるような演出なわけだなー これは巧みだな。やるなあ」

「また納得し始めましたよ」

「なるほど」

「第7点、本隊から連絡途絶した兵士が、民間人に助けられ、言語や文化の違いからくる相互の誤解、摩擦を経ながらも親密になっていく、という筋のお話は繰り返し語られてきた。けっこう皆、その筋をマインドセットにして見ていて、あのシーンもその線で読めるように、演出を組んでいるわけだな。ちょっとした一言の表現が言葉と思考の違いから誤解となりトラブルを起こしてしまい、近づきかけた兵士と少女の距離を離してしまう…という、テンプレートイベントだと読めるわけだ。ははあ。なるほど。」

「たしかに、それは誤読するかもしれないな。上手いなー。いやさ、このロボットの補佐AIいるじゃん」

チェインバーですね」

「第8点、ロボットにこのAIを付けた配役がすごい上手い形だと思ってさ。これ、御意見番というか、軍人的論理でもって主人公にあれこれ口を出してくるやかまし屋みたいなポジションに見えるじゃない。だから、いいデコボココンビだよね、という絵面で、


主人公は本来良い奴で、少女や船団に好意と恩義を感じていて手助けをするつもりなのだけれど、AIの軍人的口出しや誤翻訳によってそれが思うようにならず、誤解や過失もあってトラブルが起きていく…

といったふうに見える配役になっている。これからこの話は、そういう作劇をしていくんでしょう」

「まあそうかもしれませんね」

「実は、そういうポジションではない。この狂ったAIは滅び去ってもうない本部に忠実なだけの存在でまだマシで、それを百も承知で行動していくこの少年のほうがはるかにあさましい。すまなかった、このAIが軍人的思考で翻訳したもので勘違いしてしまった、申し訳ない、と言いながら、相手の半信半疑の半信の部分につけこんでいくんだからね。」

「ゾーンに入ったな。まるきり妄想状態だ」

「仮定の過重積載からの崩落事故ですよ」

「実際これから何度も、少年はAIに、自分はあくまでただ本部に忠実な兵士なんだ、その範囲をふみ越える目的は何も持っていない、とだけ語るだろう。自分の行動すべてをその線に理由づけて説明し続けるだろう。視聴者はそこで語られる言葉を聞き、そうかそうなんだと受け取る。あのAIはかなり賢いから、それを言い抜ける言葉や行動もそれだけの説得力を持つことになる。実に巧妙な、見事な人物配置だ。気の狂ったワトソン役、偏執した聞き手を主人公の脇に用意して、主人公がそいつに虚偽の説明をし続ける。そうすることで、頭が固く民間人を蔑視している融通のきかない軍人AIを、少年がなだめすかしながら不器用ながらなんとか人々の役に立とうとしているんだ、と読み取れるようになっている。」

「これから周囲の登場人物たちも、この少年を、信じよう、いや信じないぞ、と言い合い、あれこれ揺れるんだろう。そしてテンプレートパターンでは、信じる奴が良い登場人物で、信じない奴は疑心が強すぎるのだがいずれ和解していく登場人物だ。この第1話第2話でもそれに沿って、少年を信じようとしていく少女とその弟が夢や希望を持っている良い人物に描かれ、一方、信じない奴には金髪の兄ちゃんが配役され、考えの足りない浅い人物だ、と演出されている。これは確かにそう読むよな…その様式美は完全に実装されているもんな…いや、まてよ、そんなに『誤読させるのが上手い』が続くと、どんどん僕が間違っている可能性も増えていくぞ」

「やっと何かに気づいたようだ」

「お忙しいことです」

「なんだよー じゃあベットするかー? 25%、昼飯でいい?」

「まーいいですかね」

「5%ぐらいじゃないの」

「なら当たったら昼飯3回奢られ、外れたら1回奢りね。そっちは19回と1回でいいの?」

「あーそういうこと? 待って、まず、当たり外れの判別をどうするかだろう。例えばハッピーエンドになるかどうかを…」

「ハッピーエンドなんて定義が緩いですよ」

「誰にとっての、とか、どうとでもなるじゃん」

「ふむ、そうかな。では、それなら、さしあたり…」

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