指輪世界の第五日記。基本的に全部ネタバレです。 Twitter 個人サイト

政党を信頼していない人が投票したほうがいい一つの理由

 政党のような巨大な集団が自分個人と嗜好が一致することは稀だし、それらに自己同一化したい、できるという思いはナイーブだ。自己同一化できるようなものが現れるのを待ってそれに投票しよう、そうでなければその価値がない、という考えはかわいらしい。

 政党は日本にたったの11(※国会議席)しかないのだ。そのうちのある一党に嗜好がきわめて一致しているような人は、ある程度の数いるだろうし、ご結構なことで、彼らはその政党と一緒に元気に歩んでいく。だがほかの多くの人にとって政党は添い遂げるようなものではないし、そしてそれでそれはいい。政党に(集団に)心の底から帰属する必要はないのだ。

 完全に心の底からは同意できない相手でも、一票を投じればよいのだ。懐疑的な人間はそれでよい。その相手が自分の好みより遠く進みすぎて離れたら、今度はまた別の相手に投票すればいい。一票の投票は、なにか決定的に不可逆にその相手に何かを預け渡す行為ではない。

 「政党や政治家に心の底から同意し、帰属し、そこに一票を投じることができるはずだ」「それができないならその価値がない」という考えはナイーブだ。もし、「帰属できないから」と棄権していると、「帰属できるはずだ」という人たちが勝つようになる。

 「心の底から帰属できるはずだ」という人たちばかりが勝つようになると、これら人々の支持をたくさん得るには抽象的で低解像度なスローガンのほうが有効なので、国家の動きが粗雑になるリスクがある。



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