指輪世界の第五日記。基本的に全部ネタバレです。 Twitter 個人サイト

悩んで選んで、うまくいく、のトリック/ボードゲームのデザインと選択肢

ボードゲームのデザインで選択肢を楽しく悩ませること関連のメモ。

人間(動物)は本能的には、「悩んで選んで、うまくいく」に毎回なるのが楽しいのだが、対人ゲームでは毎回そうはできない。

だから、うまくいきやすい時は悩みが多く、いきにくい時は悩みが少ない、みたいなゲーム構造にできるといい。

たとえばモノポリーでは、優勢なプレイヤーはお金も物件も沢山持っていて、どこを増築するか、誰と何を取引するか、選択肢も沢山になる。多数の選択肢の中から何をどうするか、悩んで選んで、その結果もおそらく勝利になる。こういうときのプレイヤーは悩むのが楽しい。

不利なプレイヤーの方はというと、お金も物件も少ないので、選択肢が少ない。「もうサイコロ振るしかないよ。えい!」になる。たぶん負けるのだけれど、考える選択肢も少なくてあまり悩まなくていい。
モノポリーはこういうふうに、悩みの量が非対称になるようにできていて、良い構造だ。

一方、例えば麻雀だと、南4局で2万点差の最下位、とかなると、もう何もできないよ、となるのだが、それでも手牌14枚から1枚を選ぶ、という選択肢の幅は、優勢なプレイヤーの14枚と変わらない。このへんは古い。
もうどうせ負けるんだから手牌7枚にしたりサイコロで決めたりすればいいのになどとも思う。

21世紀のアグリコラ系ゲームは、勝利点計算が複雑だったり、秘匿勝利点があったりで、ゲーム終盤でも自分が負けていることがわかりにくいようになっている。

そして自分の農場の要素は増えているので、勝利点計算等に詳しくない初心者ほど、「うちの農場もこんなに広くなった。なんだかんだでもしかしたら勝ってるんじゃないか?」という気分で、広い選択肢を楽しく悩んで選べる。

計算できるようになった上級者なら、劣勢になった時に「(うーむ、だめだこれは負けてる…)」となるのだが、そういう人は上級者でそもそも優勢になりやすいので、「(よしよし、初心者たちが勝てるかもって気分で遊んでるな。今勝ってるのは僕なんだけどね)」というケースのほうが多い。

こういう非対称性が、ある種の21世紀のボードゲームのデザインのトリック、技法かなと思っている。

 

 

Twitterの元のスレッド

https://twitter.com/ityou/status/1526200449505714178

 

マークローズウォーター先生のGDC2016の講演

>不評だった。理論上ではバランスも取れていて,知的で興味深いジレンマになっているのだが,それが必ずしもプレイヤーに「楽しさ」を感じさせるわけではない


おそらく上記講演の記事化されたもの

>刺激には2種類あり、知的刺激と感情的刺激に分けられるということがわかった。
>マジックにおいては、カード・ファイルを見るのが知的刺激であり、カードでプレイするのは感情的刺激の比率が高いのだ