指輪世界の第五日記。基本的に全部ネタバレです。 Twitter 個人サイト

勝って弛めてログアウト/DAoCのノンゼロサムっぷり

 DAoCの対人戦についてひとつ加言しておかなければならないことがあって、それはバトルグラウンド特有の「勝った気になって終わるシステム」です。

 21時ぐらいから集まり始めたプレイヤーたちは遊撃戦を経て、頭数が増えることで攻城戦に移行します。そうして複数回の攻勢が仕掛けられていきます。この攻勢が、たとえば三回なら三回撃退され、凌がれた時点で、幾人かの守備側プレイヤーは満足します。「よろしい、われわれは三度もの攻勢をはじき、凌いだ。さんざんkill経験値を稼がせてもらった。そろそろ眠らせてもらう。さらばだ負け犬諸君、精進してこいよわははは」です。

 こうして守備側プレイヤーたちは順次気持ちよくログアウトしていくのですが、攻勢側は悔しさから、比較的ログアウト速度が遅くなります。すると、人数差ができてきます。でもって幾度目かの攻勢でついに、たとえば深夜3時ぐらいに、城が落ちます。

 攻撃側は「やった、守備側を排除しNPC城主を倒して、NPC衛兵(そしてNPC城主)はわが国のそれに入れ替わった。われわれは落城経験値を得た。門前で万歳三唱をして、解散しよう」となります。一方守備側は、既に「何度も勝って」おり、その過程で多数を相手にkill数を稼いでいるので、やはり勝った気でログアウトします。

 そして次の晩、ログインしてバトルグラウンドにやってきたときに、城がどちら側のものになっていても、プレイヤーは気にしません。よし守るか、よし攻めるか、と思うだけというか、むしろ不在時に攻め落とされていたほうが「よし落とされてる、これで攻めができる」という傾向がある。こうして三方一両得の展開が毎晩生じます。なおこの条件でも談合行為が正面に出てこない理屈については過3月4日付エントリの、コミュニケーション制限まわりの説明を参照のこと。

 利益がプレイヤー間ゼロサムではなくシステムから降ってくるものであること。プレイヤーキル利益と、落城(NPC制圧)利益の両方があり、いずれも瞬間の利益であって維持利益が無いこと。利益地点が勢力拠点の中間にあって戦力振幅が容易に結果すること。そういった話になりましょうか。この、経験値という利益によって生じる構図が、FPS(一人称視点の複数プレイヤー通信対戦シューティングゲーム)と違いの出るところです。



[GDC#15]MMORPGの開発者達がゲーム世界の作り方で大論戦 インスタンスって、5年前の「アナーキー」のミッションインスタンスあたりから表面に出てきた問題らしいけれど、まだまだテーマなんですな。

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