指輪世界の第五日記。基本的に全部ネタバレです。 Twitter 個人サイト

潜水艦と対外的緊張

 もうずいぶん古い話になるが、去年の11月に、海上自衛隊が中国の原潜を追尾したというニュースがあった。

 潜水艦の追尾なんてのは、失敗しても黙っているし、成功したらもっと黙っている種類の情報だ。どれだけの性能の艦がどのルートを通った時に探知できたか、できなかったか、というデータを、相手に教えてやってどうする。

 だいたい、日本のディーゼル潜水艦は、長期の潜水はできないけれど、日本近海の限られた海域で行動するなら静粛性世界一だ(言い過ぎ?)。日本は潜水艦を毎年1隻ずつじゃかぽこ作り続けており、これは造船所設備と人員を2箇所(三菱長崎、川崎神戸)維持するためで、海洋交易護衛重視の表れといえよう。おかげで日本潜水艦部隊は、就役期間十数年を越えない新鋭艦ばかりという贅沢なラインナップになっている。騒々しい中国の原潜なぞ、じっとストーキングしていたことが何度もあるはずだ。そうやって音と行動パターンを、無言で蓄えるのが仕事だろう。

 外交カードを次々に切って対外的緊張を高めるという行為は、相互の政権にとってそれほどリスクのある選択肢ではない。先行きの短くなった政権なら賭けるものは少ないし、内政問題への世論の圧力が緩和される(極端にわかりやすい例は1982年のアルゼンチン)。また、ある一方との緊張が高まれば、ほかの一方への接近が容易になるというメリットがある。

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