指輪世界の第五日記。基本的に全部ネタバレです。 Twitter 個人サイト

免責できないとき/ピットディガーサモナー

「こんなのに引っかかるやつが阿呆なのだ」を書いた。

 これの本文は、MMORPGでの人月(マンマンス)級の大規模詐取/横奪行為についての話であり、これ自体はその補足で余談だ。しかし、なかなかよく書けた。

 ここで用いた理屈は先日イラクで首ちょんぱされた香田さんの話に適用することができる。彼の死も、綱引きモデルで扱うべき事柄ではない。彼の愚かさを責めて話を済ます人がいるが、ぬるい。

 彼は容易に避けうる落とし穴に落ちて死んだが、彼の落ちた穴は、設計者が「これぐらいまで塞いでおけばいいだろう。まだ少し開いているが、避けてくれるだろう。これぐらいで勘弁してくれ」と期待して開いたままにした穴ではない。彼の落ちた穴は、その設計者すなわちテロリストが、全力を注いで掘った穴、小さくはあっても、命をかけて掘った穴だ。このように関係者の中に非善意によって振舞うプレイヤーがいる場合、綱引きモデルで考えてはいけない。

 関係者の中の一者が問責されることで他の者は免責されるというのは、ある程度共通の善を戴いている集団での話である。集団に強い利害対立が持ち込まれたら、もはやそうはいかない。香田さんの愚かさをもってしてテロリストの邪悪さや各国政府の無道さは、免責されない。

 容易に避け得るものであっても、人の前に落とし穴を掘って回り続けられては困る。何個も何度も掘られればいつか落ちかねない。そういう嫌なプレイヤーを呼び寄せるコストに見合うだけのベネフィットはないと僕は思う。したがって日本政府の選択を問責する。やめなさい。

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