指輪世界の第五日記。基本的に全部ネタバレです。 Twitter 個人サイト

なんといい面構えだ/アイドルマスター架空戦記話

「先輩、おはようございます」

「おはよう、昭広君。それは何を見てるの」

ニコニコ動画アイドルマスター架空戦記をですね」

「君それ好きだね。昔からギャルゲーやるもんね」

「ギャルゲー。たしかに。しかし、昔から、と、いうと…ちょっと違うところもあるのですよ」

「うん?」

「僕も30代になりましたからね、だからアイマス架空戦記を嗜好するようになったわけです。というのは…」

「ほう」

アイマスで、最も重要な台詞というのは、何だと思いますか? まあこれは、これから僕がする話において重要って話なんで、理屈が後出しになるから卑怯なんですけど」

「ま、いいよ、そうだな…


「プロデューサーさんっ! ドームですよっ! ドームっっ!」

とかかな?」

「お目が高い。僕が思うにはですね、この台詞が…


「あー、そこでこっちを見ている君! そう君だよ、君! まあ、こっちへ来なさい」

「ほう、何といい面構えだ。ピーンと来た! 君のような人材を求めていたんだ!」

この台詞の後は、こう続くんですが、


「わが社は今、アイドル候補生たちをトップアイドルに導く、プロデューサーを募集中だ」

これがアイマスで最も重要な台詞かな、と。」

「それ、娘っ子の台詞じゃないじゃん。ゲーム開始時のプロダクションの社長の台詞だろ?」

「ここのポイントはですね、『何といい面構えだ』、これです。面構え…つまり、特別な根拠なしに、無根拠に、ユーザーはこの765プロダクションのプロデューサーに採用されるわけですよ」

「はあん?」

「そしてこの場面の結果、プレイヤーは765プロダクションに所属し、1〜複数のアイドルのプロデュースを担当し、パラメータを鍛え、服を着せ、テンションを維持し、オーディションに出していくことになります。それはつまり、かなり『子を育てる』に近い行為ですよね?」

「ああ。アイマスのプロデューサーと娘っ子の関係は、恋愛関係も読めるけど、育成関係の構成にかなり寄ってるよね」

「そう。若者を育てるほうに強く寄っています。ですのでアイマス架空戦記でいうと、いわば、765プロの12人の娘っ子のうち、1人がその語り手の選んだ『嫁』、『俺の嫁』であり、他の11人が『俺の娘たち』となります。ぎゃーきゃーとかしましい娘たちがわらわらいる小集団を仮想して、その集団が仲良く活動していく過程をシミュレートする。それがアイマス架空戦記というものだと考えることができます」

「ははあ。その、小集団というのは、家族だな」

「そうです。そして、同時に、この765プロダクションというのは、プレイヤーの、プロデューサーの職場でもありますよね」

「うん?」

「ですからこの社長の台詞というのはですね、プレイヤーに、職と、嫁と、家族を、セットでいっぺんに与える台詞なんですよ。」

「ああー?」

「職と嫁と家族っていうのは、30代の野郎には非常に訴求するものなわけですよ。」

「あー。あー。盆と正月と七夕がいっぺんに来ると。」

「全部入りというやつですね。この台詞を書いた人はすばらしい。実にすばらしい。訴求力のある、願望充足的な台詞ですよこれは。」

「はは。誉めてるんだろうね」

「もちろんです。女の子が無根拠に空から降ってきて恋人になる、という、一般的な落ちものシチュエーションに対して、アイドルマスターでは、職と女の子が降ってきます。そこでさらにその女の子たちを『嫁』と『家族』にして扱うというのが、ニコニコ動画アイマス架空戦記の世界なわけです。男の子がシルバニアファミリーでままごとをするような感じですか」

「なるほど? しかし子供が11人、ってのも、ずいぶん多いね」

「昔は幼児死亡率が高いですから11人ぐらいは…もっとも実際、11人出ずっぱりに描ききるシリーズは多くはないんですけどね。たとえばこの…」

「なんて文化的な休日だ」

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