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猫話二点

「最近やっと猫についてわかったことがふたつある。」

「猫ですか。はあ。」

「まず、ひとつは、猫ってよく人が読んでいる新聞の上にやってきて座るだろう。」

「ああ、邪魔しますよね。何すんだっていってどかすと、さも心外そうに怒るんですよね」

「それなんだけどさ。むしろ、逆なんではないかと考えついた。」

「逆とおっしゃいますと?」

「猫ってのはさ、待機監視系の狩猟動物でさ、見張って待つのが仕事なわけよ。静かに獲物やよそ猫が視界に、あるいは聴覚域に入るのを待って、日がな一日を過ごしていてなんら退屈しない。むしろ楽しく待機監視業務を行って日々を暮らしていく生物といえる。」

「まあ、そうは言えますかね」

「で、ハトなんか見てるとよくあるんだけど、動物って餌を探してるとき、仲間が行くところに自分も行くんだよね。それはわかるだろう?」

「仲間がどっかに急いで飛んでったとしたら、きっとそこに餌をみつけたからで、だから自分はその餌を見ていなくても、その仲間の行くところに行けばいいって話ですね。公園で誰かが餌をまき始めた瞬間に雪崩のように鳥が飛んでくるときの理屈ですね」

「それと同様に、猫も、仲間がどこかでじっと待機監視業務に入ったら、『ほう…そこが獲物の来る見込みの高い監視スポット、監視時間帯なのか。では俺もご一緒させてもらえるかな』って一緒に座り始めるわけよ。」

「ふむ?」

「よく、数匹の猫が往来でじっと座ってるじゃない。あれは気の合う仲間と一緒に共同で監視業務してるんだよね。おそらくは。」

「一人の目耳よりも二人の目耳で、片方が気付けば二人とも気付ける、ってわけですか。人じゃないけど。信頼できる相手に背中をあずければ視界が倍になると。」

「で、さ、人間が、新聞紙の前に座り込んで、じっとそれを眺めてるってのは、猫から見るとまさに待機監視業務をはじめたふうに見えるんだよね。たぶん。」

「ああー?」

「だから、俺も一緒に見張るよー、って来てるんだと思うんだ。」

「一緒にPOP待ちをするつもりで来てるんですか。ははー。でも今どき家屋内でネズミなんて出ませんけどね。」

「ちょっと強く擬人的解釈すると、猫的にはさ、人間ってのは普段ろくに狩りもせず、動きもにぶい。『こいつら大丈夫かなあ? 狩りの仕方も知らないし縄張りの見回りもせず、怠けてばかりいて正業(※待機監視)に就かない…』ってあきれつつ心配してる」

「それは擬人的解釈しすぎでしょう」

「まあね。でも、ま、それとして、そういう日々に、人間がじっと座って新聞読み出すと、『おお。こいつもやっとまともな仕事(※待機監視)をするようになったか。ひと安心だ。よーし手伝ってやろう。』ってところじゃないかなーとかね」

「はは。それで自分も座ると、どかされるもんで、非常に傷つくわけですか。」

「そうそう。『な… お前ちょっ、お前動態視力も悪けりゃ聴覚もにぶいくせに、狩場一人占めしたいってわけ!? どういうつもりだよ!?』」

「猫も大変ですね。もうひとつっていうほうは?」

「うん、もうひとつのほうの話は、」



「もうひとつのほうの話は、猫の戦闘時のグラウンドポジションについてだ」

「戦闘時の…? 寝転がった体勢から、蹴ったり噛みついたりしてくるやつですか」

「そう…これは、けっこう簡単な話なんだけれど、あれは猫的にはけっこう強い。」

「はあ? 強い… ですか?」

「人間でいうと、倒れてしまっている体勢ってのは、かなり弱くてさ。近代格闘技でマウントポジションを取られると事実上負けじゃん?」

「そうですね。」

「でもだ、猫だとさ、倒れててもあんま弱くならないんだよね。考えてみると。」

「というと」

「猫は四肢で立ってるから、立ってる猫が倒れてる猫を攻撃するときは、片前肢しか使えない。立ったままでの攻撃手段はいわゆる猫パンチしかないんだよね」

「ははあ?」

「それに対して、倒れている猫のほうは、グラウンドポジションから、両前肢、両後肢、あと顎での噛みつきも使えるんだよ」

「ふむん。『組み手争い』に使える前肢が2本あるし、猫キックもできると。」

「そうそう。それに、猫最大の武器である噛みつきも、両前肢で相手の頸を抱え込んでこそ強い殺傷力を発揮する攻撃だしね。」

「よくこっちのなでてる手をホールドしてやってくるやつですね。たまに強く噛んでくる猫がいますがそうとう痛いですよね。あのホールド、なかなか外れないし。」

「猫的には、のどくびに食らいつくっていう、まさにあの慣用句の攻撃、頸動脈とか神経とかまで狙える大技だよね。ただし、立ってる猫の側からこの抱え込み噛みつきに持ち込むときは、けっきょく自分も倒れ込むことになるわけで、その意味でも、スタンディングポジションにそんなに優位性がないんだよね。」

「なるほどー」

「そういうことでさ、たしかに、倒れちゃってる側は、その状態から縄張りを相手の方に押し込んでいくことはできないわけで、あくまで防御的戦闘をする時には、ということなんだけど、猫のグラウンドポジションはけっこう強いっぽいなと。」

「ああやって転がったときに、猫的にはけっこう自信を持った状態だということですか」

「お前の方が強いけど、調子に乗るなよ! 泣かすぜ! って、思ってるっぽいね」

「ふだん深遠なことお考えなんですねえ」

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