指輪世界の第五日記。基本的に全部ネタバレです。 Twitter 個人サイト

どうもならんところを静かに/デイアフタートゥモロー

 デイアフタートゥモロー観て来た。

 予告見たときは、天気相手に無理矢理(ノーパソかなにかで)立ち向かい、勝ったっぽいラスト絵面にもっていくノリかと思っていた。さらに前評判(id:Projectitoh:20040526等)から、端々にみてらんない辛く苦しいシーン多発かと怖れたのだが、あれ?この品のよさはいったい……京都議定書のPR映画……エメリッヒ、あんたはいいやつだ。

 中で物が燃えてるエンジンや人を空気で凍りつかせてみる等、環境まわりに間違いを投入することでドキドキ量を確保している。一観、人間の挙動のヒステリーで興奮させそうなものだが、すなわち1分も2分も「早く行け!」「あなたを見捨てるなんてできない!」をやったり、あるいは この飛行機にはあとひとりしか乗れない、俺だ、あたしだ のつかみ合いをやりそうなものだが、そういう喧噪する人間のドキドキ(EBMバトル・ロワイヤル感想)を映さないので、とても寛げて良い。浅い意識でのドキドキはあるのだが、問題として解決法のない辛く厳しい「ああもうそれどうしようもないだろ!喚くな!」なドキドキがないので楽だ。この落ち着いた雰囲気が好きな人は図書館行って『渚にて』推奨。人類、滅ぶならこれぐらい静かな態度で滅びたいものですよ、違いますか?

 別の言い方で言うと、なにかプロットの枝ができるたびに、それを怒鳴り合いや涙や死やその他、こまめに絵で回収されるとうるさくって気疲れする。画面に映らなくても妄想だけで十分御腹一杯なその手の話を大量にカットしてくれてるので楽で嬉しい。

 南へ避難する最後の便に、主人公のおかん(医者)は、重病患者の少年を残しては行けないと残る。呼びに来た看護婦は抱き合ってから去り、以後画面に出てこない。おかん達は、後で救急車輌隊が立ち寄ってくれて助かるんだが、早川君(混沌協定)いわく「あそこで救けに来るのは看護婦でなきゃ」。しかし違うのだ。あそこで、「ごめんね」とだけ言って自分は逃げちゃう、それで終わり、というのがいい味なのだ。残る奴もいる、逃げる奴もいる、その時、「ごめんね」と言うしかない、というのがかっこいい。うっかりした映画だと、この後に看護婦が吹雪で死ぬカットを入れたりしかねないが、そういうこともしない。ここの処理はちょう萌える。



 あとは俺デイアフタートゥモローを脳内上映して……


・少年の読む本がピーターパンじゃなくて『長い冬休み』とか

・封鎖されたメキシコ国境の場面で、暴動になって墨国境警備隊発砲→虐殺 妄想だけで面白い

・船から逃げる途中で追ってきた狼が凍結して走るポーズのまま彫像、あるいは

・超冷却により篭城した暖炉のすぐ側まで追い詰められて、それまで敵だった狼といっしょに身を寄せ合ってしのぐ――こっちのがかわいいし、モフモフしてるかな。あるいは、

・超冷却により篭城した暖炉のすぐ側まで追い詰められて、そこで大事にとっておいていたグーテンベルクの聖書を燃やしてしまう

 うーむ、よしよし。いい映画だった。

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