指輪世界の第五日記。基本的に全部ネタバレです。 Twitter 個人サイト

真実善良清美

 真善美という単語があるが、これが一単語であることにだまされがちなので危ない。真実と善良と清美という三つの性質は、あまり一致しない。良いことだからほんとうのことだとか、正しいから美しいものだといった理屈のつなげかたは、うっかりやってしまいがちな展開だが、かなり脆弱な連結であり、ほぼ駄目だ。これら三つの性質が一つの物事のなかにそれぞれ高く含まれているというのは、時にはあることだし、そういう物事は素敵ではあるが、いつもそうなっていると期待することはできない。三つの性質がトレードオフを起こしている場合も多い。



 この理由として言えるのは、真実、善良、清美、そしてこの三つ以外にもいくつかありうるだろうけれど、十分に考え磨かれた価値基準というものは、互いにかなり独立で、直交した体系から成るはずだということだ。

 言い換えると:

 これこれの物事Xは、ある見方Pからみると、またはある切りくちPで切ると、Aということが言え、Bということも言え、CともC'とも言えるし、BとC'からDということも言える。これらから、物事Xは、相当程度真実であると言える。と、こういうふうに論じた時に、これらAやBやCといった論拠、およびその並べかたPを、善良や清美を語るために使い回すことができない。善良や清美を論じるうえでは、真実を論じるために使ったAやBやCやC'やDは、再利用性が低い。

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