ファーストムーブで定義？ 殺る気だな。

　まず定義から、と語りを始める人がいますが、おおまかに言って、誤りです。理屈や感想を語る場合には、定義をほかして始めるほうが、味の良い出だしになる場合が多いです。

　まず厳密に定義をかためた概念を土台において、そこから演繹的に話を伸ばすという手は、たしかにあるのですが、そうした定義はたいがい、広く認められた万人の納得できるものなので、伸ばされる幹枝が万人の既に薄々想定しているものになりやすく、意外性が減り、面白くなくなりがちです。もっとも、その長い関門をくぐりぬけられれば、誰もが知っている場所から思いもよらぬ高みまでつなげてみせられたなら、拍手喝采であり、スモールチャンスハイリターンというやつなので、挑む意気は果敢です。（※この段落の理屈は使い捨ての評価基準と同じ）

　理屈や感想を語るのではなく、討論や喧嘩を言い合うのならば、共通の定義をひととおり確認してからのほうが勝負がはっきり進行します。ま、それは決闘くんの管轄です。

　言い換えれば、第一手をきっちりした定義から入るのは、対戦を志向した流派の手筋だということです。

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