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橋(1959)

 正月に実家に戻ったときに新宿ツタヤで映画「橋」のビデオを発見しました。戦場にかけるのでも遠すぎたのでもレマゲンのでもなくて、1959年にドイツでつくられたDie Brückeです。www.warmovie.comのReviewのUnteroffizierさんの感想を読んでからずっと気にしていた作品で、猿遊会にGB2をやりに行った時にもインメルマンのたしか佐藤さんに薦められたのですが、非常に面白く、渋かった。あらすじは、1945年の西部戦線の末期で、7人のドイツ少年兵が故郷の町の橋を守る任務に就かされて全滅するという話。

 戦闘シーンで、偽シャーマン戦車を映すカメラを塹壕の少年兵に置いてしまったために、はっきり四輪のタイヤが見えてしまって可愛かったりしますが、家屋内をつたってパンツァーファウストで肉薄して撃破*1とか、その時のバックファイアで一人死亡とか、正しい探し的にかなりいけます(アップルシード/正しい探し漫画)。さすが戦後14年です。地主の息子が、中距離戦で短機関銃の弾が切れて、父親の拳銃に持ち替えて戦い続けて撃ち負けて死ぬという演出などが光ります。第二次大戦的に拳銃は近接戦で役に立つかどうかという武器で、その場合でも短機関銃のほうがはるかに有用ですから、本質的には将校が、その職務が指揮であるにもかかわらず持っていなければならない最低限の暴力装備なのであり、部下に援護下の突撃を命ずる時に自分も敵に向けて銃声を発することができるとか、あるいは小隊の兵卒たちがモラルハザードしそうになったときに指揮官が非武装では困るとかいう意味で存在する兵器です。その点が、まだ年若い地主の息子や、出立に際してそれを手渡す彼の母親にはわからなくて、死ぬ。この演出をはじめとして、少年たちの若さ、子供であることについての描写が徹底的に配置されていて素晴らしい。前半部で、父母や教師や訓練将校ら大人たちは既にこの戦争負けだとわかっていて、なんとか少年たちの徴募を覆そうとするのですが、少年たち自身にはその状況がわかっておらず、召集を喜ぶ。けれども橋の守備中に、撤退する兵員輸送トラックとかが通り過ぎていき、サイドカーの故障した将校が後続にサブマシンガンをつきつけて同乗するなどのさまを見て、かれらも怖気づく。ところがしかし地主の息子がつたないなりの責任感と統率力を発揮して、任務を継続できてしまう。そこで前半部の彼の生家での芝居で、父親が不在のあいだ、彼が召使いたちばかりでなく外国人労働者や東部からの捕虜を使っていた、という描写が生きてくる。かっこよすぎます。

 あとさりげにえろいです。モノクロで画質のあらいところにアーリア少年の半ズボンなのでうっかり萌えかけますが、おさげの同級生もものすごくかわいい。この女子のシークエンスも白眉で、7人のうちのひとりが川辺をデートして腕時計をプレゼントなどしやがり超高圧加圧されるのですが、召集状が来て出頭の前夜、ベンチにふたりで座って「頼みがひとつあるんだ」「なに?」うおお来たあ――と視聴者と女子が盛り上がるところに「時計返してくれない? 夜光塗料だからさ、夜間の作戦で役立つと思うんだ」

減圧しやがった
女子も呆然の脚本ですよ。思い出残留(EBM思いで残留)の欠片も残りません。これも、少年たちの少年さ、年若さの描写の一部というわけです。まったく恐ろしい。これたぶんこの女子、年を経て大人になって、この時のことろくに思い出しませんよ。だれか他人の思い出の中に残るという権利もまた、男の子には、生き残り勝ち取らねばならないものなのです。

 出頭前夜にはこの他、憧れていたお隣の理髪店のお姉ちゃんと自分のやもめの父親との関係に気づいてショックとか、地区長の父親が母親だけ先に疎開させてBdMのお姉ちゃんとできてるとか、えろい状況が示唆されつつ、それらが少年らにはまだ手の届かない世界であるという描写が並びます。与謝野晶子の、柔肌の熱き血潮に触れもみで、というやつです。

 あとこのBdMのお姉ちゃん込みで、ドイツ女子青年団の女子さんがたが並んでブルマー姿でボール投げをしているという絵面があり、もうどうにもこうにも。



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*1 パンツァーファウストで肉薄して撃破

 徴募から実戦までの極短期間に施されたささやかな訓練で、下士官のおっさん二人組が、半ば以上シニックに、少年達に短距離疾駆→伏臥だけをやらせる。のちにこの訓練が意図せず功を奏しシャーマン一輌と民間人一人を殺してしまうという細やかに悪辣な演出が光る。

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