指輪世界の第五日記。基本的に全部ネタバレです。 Twitter 個人サイト

先輩300解題

「だってあれ、馬鹿映画じゃないんだもん。適ッ確でさ。いちいちクレバーで可愛気が無いんだよ」

「またまた」

「いやいやそれがどうして。あの娘やるもんだねだよ。絵面は隙だらけの馬鹿映画に見える。戦闘筋肉馬鹿格好いいぜ、ってね。そういう見た目、テクスチャに見える。でも実のところ、題材、脚本、演出どれもが、世界観を伝えるために必要十分に、ウェルメイドに構成されていて、隙なんかぜんぜん無いんだ。それでその世界観っていうのがこれが………」

「何ですか」


 イラクで負けているのは、最初から数十万の大兵力を投入せずに、連合14万などという不十分な陸戦兵力で開戦したためだ。当時なぜそうしたかというと、上下議会における反戦派の権限が強く、大統領がそれに屈さざるをえなかったからだ。そのうえ反戦派は大統領を「詭弁によって法をまげ、さらに嘘をついて開戦した」と侮辱し、のみならず、勇敢な男達の留守に、卑劣にも配偶資源を奪う。

 いま、戦況は明らかに悪く、大統領の命運は尽きた。彼が再選されることはあるまい。イギリスも抜けようとしている。しかし同時に、やっと天下に明らかになったのだが、反戦派は私利のために国家を切り売りしている裏切り者であり、ついにしかるべき義憤を受け、裁かれた。

 裏切り者達が粛清され、真実が戦士の口から語られ広く知れ渡ることによって、大規模な増派計画が承認される。撤退など、腰抜けのたわ言だ。勝利は目前だ。われわれが本気を出せば、勝てないわけがない。

「この世界観は正しくない。特に、開戦時と現在の状況をごっちゃにしているところが。あと、問題は、敵に対する戦術〜政治レベルでの(つまり全レベルでの)関心の無さだ。相対する敵とどのように戦うべきか、どうすれば勝てるのか、と問うことがなくて、自分達の築いてきた戦闘技術体系を信頼しきっている。」

「それってアメリカが世界一進歩した軍事システムを持っている、っていうことを言ってるんですか?」

「うん。あれはそれなんだよ。その意味で、戦争をうわの空で戦っており、現実から遊離している。」

「そう言われても。」

「サイとかゾウとか2カットぐらいで十分だと思ってるよね、あの世界観。本当に関心があるのは国内の裏切り者のほうでさ。貧弱な三流国家での戦線は鬱憤を晴らす射爆場で、本国内での政治的帰趨のほうが主題なの。視聴者に快楽を与えるパートは一騎当千の戦闘、ストレスを与えるパートは裏切り者を疑いながら手を出せないでずっと困っている状況。よくできてて笑えないのよ。」

「うーん? まあこれ、これが大受けしてたら、その国で撤兵論を唱えるのは窮屈でしょうね」

「そう。裏切り者はまず殺せ、証拠は後から見つかる、むしろ暴力を使うのを我慢している間は裏切り者に勝てない、って話だもん。裏切り者を刺すと議会の意思が統一される。増派のプロパガンダなんだけど、それと同時に世情醸成による一種の恫喝を試みている。稚気が無い、子供のやる事じゃないよ。ハト派の人らが怒り狂うのは当然といえよう。あ、あった、あった、原作との差分はこんなかんじらしい」


778 :名無シネマ@上映中 :2007/06/12(火) 23:21:09 id:T1dO/k/v

じゃあ出てくるよ。

原作信者からすれば実際言いたいことは色々とある。

みんながいらないって言ってる王妃関連、あの人原作じゃ1ページしか出て来ない。

息子も出て来ない。「スパルタには息子が必要だ」も全然違う文脈で使われている。

「民主主義なんかアテネ人にくれてやれ」なんて台詞もある。

嵐の海の場面、スパルタ兵たちが騒ぐ前でレオニダスの名独白

(愛すべき馬鹿共、勝てるとでも思っておるのか)も採用されてない。

ペルシャ軍に蹂躙された村の描写とかもない。孤児も出ない。モンスターもろくに出ない。

映像的なインパクトは映画の方があるかもしれないけど、

原作の方はかなり虚無的で、スパルタ人たちがより戦闘狂的に描かれている。

映画は、ある意味、一般人向けにものすごーく薄めたうえで、

家族とか盛り込んでものすごーく分かりやすくしてある。

原作信者が出て来ないのは、絶対数が少ない事と、

日陰者根性が染み付いているからだよ。

売れてくれればなんでもいいもん。

何年も前から原書持ってる俺はずっとニヤニヤしてる。

原作の翻訳版は部数あんま刷ってないらしい。

版型が特殊なのと、アメコミは売れないっていうイメージがあるから。

見かけたら買っておかないと

一生後悔しろ

「命令形かよ! 届いたら君にも貸すよ」

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