ジョジョの警察官と艦これのレア艦掘り
「先輩、次の艦これのイベント、最初の数日を、ネット情報見ずに遊ぶって遊びをしてみませんか?」
「というと?」
「公式ツイッターだけアリで、ほかのまとめサイトとか掲示板、ブログなんかは見ないで遊ぶ。攻略wikiはイベント開始以前の情報はアリ」
「うーん、数日ならいいよ。今回はたぶん終盤に追い込みをかけることになると思う」
「ぜひやってみましょう。よし。TLで攻略系のつぶやきをする人をミュートだ…」
「そういうかんじなのね。このスカイプチャットの二人だけでやろうということね」
「そうそう」
「おかえりなさい。ログインできました?」
「おつかれさま、えーと…よし入れた」
「じゃあやっていきますか」
「第三第四第五がお札付きなのね…連合艦隊は第二第四第六…報酬艦が…」
「攻略メモをどこかで共有しませんか」
「ああ。それだとGoogleDocsあたりがいいんじゃないかな。ちょっと待って、いまひとつつくってみる」
「じゃあまずドロップ艦一隻でマップ画像のキャプチャを撮ってきます。ゆけ、磯波ちゃん」
「潜1でA行き」
「装空1巡戦1戦3でB行き」
「空1潜1でA行き」
「よっし、撃破、クリア!」
「おつかれさまでした。さあローマ掘りですよ」
「ちょっとまって、少し…仮眠させて」
「今日の調子はどう?」
「今日は10周こえてまだ出ません、疲労抜き中です…だんだんイライラしてきました。先輩が拾ったのは何周目でしたっけ」
「8周目だね。ふむ。『艦これの大型建造やレアドロップ掘り』と『ジョジョの警察官』と『ニーバーの祈り』の話はしたっけ」
「いいえ?」
「まあ話は話なんで、読み聞きしたといって気が休まるものでもないだろうが──『ジョジョの奇妙な冒険』の第5部で、警察官が台詞を言うところがあるだろう。えーと…この画像だな」
「はい。?」
「それとこれだな、キリスト教徒の祈りの文句らしいが:
神よ与えたまえ
変えられぬことを受け入れる強さと
変えられることに挑む強さと
そしてそれらを見分ける知恵とを
たとえば艦これの大型建造でいうとさ、実行した大型建造で目当てのレア艦を引くかどうかは、これはもう確率なわけだ。しかしそこで、『目当てのレア艦を引くことが成功』、『目当て以外を引くことが失敗』だという考えをしてしまう人も多い。これはよくありがちな、筋のまずい考え方なんだ」
「筋がまずい?」
「レア艦を引くことを成功、それ以外を引くことを失敗、と定義してしまうと、成功する最後の一回まで、全部『ずっと失敗を続ける』ことになってしまう。失敗、失敗、失敗、失敗… そうやって『失敗』を重ねていると、人間の神経系の評価関数は『これはまずい、このままではよくない、何かを変えなくては』と感じて、周囲の目についた存在に攻撃的になり、『外れのキャラ』に憎しみを抱いたり、なにか破壊的なことをはじめたりする」
「ふむ」
「そこでだ、こういう場合のコツは、大型建造でどの艦が出てくるかということ自体には成功失敗の評価地点を設定しないことだ。そのかわりにその一歩手前に、たとえば『一週間に何回、大型建造を回せるか』といった評価を設定する。そうして、今週は資源を集めて4回できたぞ、『なかなか悪くないな、成功だ』、次の週は遠征と資源の収集バランスを見なおして5回できるんじゃないか、その次の週はリモートデスクトップで昼休みに遠征出せば6回できるかも… このように改善と『成功』を続けていく。そうして続けていった改善の途中で、目当ての艦が出るわけだ。『おっと、まだ改善の途中だったのに出たぞ』という形で終わることになる」
「んー?」
「レアドロップ掘りでも、ドロップの確率判定の、その一歩か二歩手前のところに成功失敗の評価地点を設定することがコツだ。出撃回数あたりのS勝利率や、資源消費量あたりのS勝利率、出撃時間あたりのS勝利率などに評価地点を設定し、毎回の記録をつけて、編成や装備を工夫して遊ぶ。その地点から先のドロップ確率の領域は、自分の手の届かぬ範囲、責任外の場所とみなして、自分の失敗だとは考えない。そういうふうに遊びを二つに切り分けるんだ」
「むむむ」
「おっしゃ出た! おつかれさまでした!」
「おめおめ!」
「やー夕立の見張カットインで決めましたよ、最強ですわ…ちょっと、一眠りします、おやすみなさい」
「おやすみー。艦これはゲームだから、ドロップの確率判定っていう切り分けやすい最後の一点があるからいいよね…」