指輪世界の第五日記。基本的に全部ネタバレです。 Twitter 個人サイト

時間を持った五角形の娘の保護と死

 デッサンのすごい絵に関する話。DALさん(ゲーム枠)の掲示板で見て感動したためコピーしておいたもの。ログはとっくに流れており、引用許可を得てべた貼りする。


(無題) 投稿者:DAL  投稿日: 2月18日(水)23時11分9秒

森生まさみ絵についての話

微妙に承服しかねるというか。「細い」から「平たい」へ変化してくまではいいんだけど。
80年代後半のアニメて結局のところ「動かない、動かす余裕がない」に行き着くと思うんですわ。んで動かす余裕がちぃと出てきたときにようやく「太く」なる。で、漫画は動かないでしょ。だから「動かないアニメ」と同期したんだと思う。

その話に行く前に、まず第一にあたしにとって一番の問題点はホームベース=五角形顔の角度についてエラとか頬骨とかいう立体造形的な視点で解釈しようという薫さんの三次元主義者的発言なわけです。ことは五角形の理念の問題であって、正直なところ相田裕が重要という話をしてるつもりはない。ことは平面対立体、角度対曲線、時間対空間の対立の問題なのです。

まず森生まさみが同時代でもとりわけ平面への志向を強く持っていることは漫画を見りゃ一発でわかると思う。で、この平面的表現への志向は少女漫画において連綿たる歴史がある。動画志向の手塚に影響される前からの伝統なのか、手塚以後にエポックメイキング的な影響力を持つ作家がいたのか、そのへんは覚えてないし知らん。どっかで読んだ気もするけど。
ま、とにかく、平面的表現においては直線と角度の組み合わせがエロティシズムの発露先となる。「雫」の水無月キャラや「ONE」の樋上キャラが何故あれほどエロいかつったら、平面的でありかつ刺さりそうなほど尖ってるからです(樋上キャラはそこに立体塗りの乳をくっつけるから裸になると萎える)

なぜか。一つの顔に、重層的な時間が描かれてるから。角度はつまり直線と直線の接続点でありますが、そこで断絶してるわけです。
つまりホームベースを形作る4本の線、左右の目の横の縦線とあごの部分の斜め線は異なる時間にある。それを同時に描きこみ不連続な断面を繋げることで、静止画ではなく動きを感じさせる顔になってる。
もしかしたらキュビズムなんてのもそうなのかもしれませんがあたしは絵画理論は知らないので我流で行きます。(あるいはこのへん、読んだの覚えてないどこぞのネット文章の受け売りなのかも知れんけど)
動画志向の手塚がコマとコマの間で時間経過を示す方向に漫画を引っ張っていったのに対し(だから同時だったら大ゴマでモブになった)、同じコマに重層的な時間を封じ込める少女漫画的手法の極致として、五角形顔はある。
角度がきついほどに、一つの絵から受ける印象は不安定/動的になり、そこにエロティシズムが生じる。角度=時間経過なのです。だから、アニメ動画においては時間軸は最初から組み込まれてるので本来は角度なんて必要ない。(てゆか、動かせるなら立体を志向して丸のほうがいい)

ただしここには問題があって、ホームベース顔も見慣れると一つの記号となってしまって、不安定な印象を受けなくなります。だからホームベース顔で作家が各自のエロティシズムを表現しようとして、顔の輪郭がどんどん変化していった。
森生まさみの聖はいぱあ前半までの絵柄の変化はまさに平面的表現における動への志向が端的に示されているのです。(作家本人も一枚イラストは苦手と証言してる)


元発言 投稿者:DAL  投稿日: 2月19日(木)23時39分11秒
>かおるさん
ガンスリの女の子はめんこいのう」「あんなホームベースのどこがいいんすか」「五角形を馬鹿にするな(ここで森生まさみにリンク)」「相田はエラで森生は頬骨じゃないですか」「おまえは五角形をわかってない!」「そこまで言うなら森生まさみを貸してください」
みたいな流れだと認識してます。
>やまうちさん
これ以上やると口から出まかせなのがばれるからパス。
思いついたのは小林クン10巻の「虹色ラベンダー」ていう最近の少女漫画(主にりぼん系)の特徴を真似た絵を森生まさみが自分で描いてるので、そこで80年代と90年代の比較ができるかもしれません。りぼんで思い出しましたが種村有菜神風怪盗ジャンヌの作者)が森生まさみの影響を少しだけ受けてますね。あの前後の流れを全く無視した話の展開や絵を絵と思っていないかのような下手さは大好きなんですが。

 うーんすごい。派手な立論、納得の説得力、イカス言霊。こんなん流れては天道がたちゆかん。

 なおその後、この二方が直接会って話したところでは


「でもやっぱり、ガンスリの顔は違いますよ」
「違うかなあ」
「違いますよ」
「そうかあ、違うのかあ」
「そうですよ」
という流れになったとのこと。



 さて、みやびな世界には何種類かの娘っ子がいるが、先日述べた「フレームに入った瞬間、物語展開不要で強キャラ」な娘っ子が、その肉体性を拠所としており、戦闘美少女であるとするなら、「物語展開をともない死亡率の高い弱キャラ」を担当しているのが、五角形な娘っ子なのではないかと思いついた。

 五角形は嫁/娘で言えば娘、成長する保護対象(妹パワーでモテモテに)、経時変化が大きく、目が大きく、口が小さく、首がすわっておらず(いずれも幼児の特徴)、愚かで、もろく、壊れやすい。デコピンしたら死ぬんじゃないか?とためしに選択肢をワンクリックすると10分後に死んでしまう。そんな展開の物語はわれわれ20代青年@晩婚化 の情動をぐらぐら揺らし、商品価値を生ずる。キャラクターデザインの五角形は、その平面に時間の経過を封じ込めており、それは彼女らの担う物語を表し、幼さと成長と幼児死亡率、脆弱性を表している。

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