指輪世界の第五日記。基本的に全部ネタバレです。 Twitter 個人サイト

旧仮名遣いの文章さん

 世の中には文章さんが居ない文章というのもままある。程度問題なので、わずかには居ると言ってもいいが、まあ居ない。

 文章さんを呼び出すには、過去の読書体験に費やした時間と現在キーボードに費やす時間との、二種類の時間が要る。ときに、この界隈では旧仮名遣いで文章を書いている人がそこそこ見られるが、彼らの中にはこの前者の時間を本当に旧仮名遣いの本でもって過ごしたのか、過ごしつつあるのか疑問な人もある。

 文章さんは語尾を変えただけでそのキャラになれるというものではなく、言葉の並べ方や、語る話題にまで口出しし、制約し変更を迫るものだ。しかるに人によっては、口語で喋った言葉の並びを旧仮名表記してよしとしている気配がないでない。それは口語を喋ってからawkperlで20行ほどの「旧仮名変換フィルタ」に通しているも同然だ(実際スクリプトもある:まるやるま君)。ややもすると文語体や候文は覚えなくてよいなどと自分で言う人まである。なんて物言いだ。文章さんが居なくていいというのか。それじゃあ一体誰に惚れてその言葉遣いを選んだんだ。

 どうもこの界隈には、旧仮名遣いを隠れ蓑にして実質口語を喋っている方がある。それでこれは正しいんだからなどと、20行のルールを守って安心している。呑気なものだ。

 まあ呑気なら呑気で結構なことで、文章さんが居なくたって、誰が困るというものでなし、いいんだけど。

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