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商人と被災地の人々と被災地以外の人々

「そういうのを、利益衝突だけで考える手もあるよ」

「というと」

「たとえばその、ある一帯にハリケーンかなにかが起きて、その被災地の人々に物資を高く売りつける商人がいたとしよう」

「いたとします、はい。」

「その商人が高い値で物を売るのを見た、被災地以外の人々が、その行為に怒って、圧力を商人にかける」

「圧力をかける、はい。」

「これはさ、利益衝突として考えることができるんだよ。被災地以外の人々はさ、ある低い確率で、将来、自分の住んでいるところに災害が起きる可能性がある。その時に、どこからか来た商人に、物資を高く売りつけられたくないんだよ。」

「ふーむ?」

「現時点で被災地で商売している商人に、ある小さな労力を払って圧力をかけて、価格を下げさせる。小さな労力であっても、多数の人間がたばになると大きな圧力になることがあって、そこそこ有効だよね。それによって、将来、ある低い確率で自分に同様の状況が起きたときの環境を良くしておく。それはその人々の利益だよね。そうした人々は、商人階級ではないのだから、将来起きうる状況での商益をある程度下げさせ、自分たちの立場がよくなるように、小さな先行投資をしているわけだ。商人の利益と、そうした圧力をかける人々の利益がそのように対抗し、中間が落としどころになる。」

「利益衝突しているにすぎない、と。」

「そう。少と多、現在ある地域で行われていることと将来どこかで低確率で起こりうること、という非対称な関係ではあるけれど、そういう条件のうえで利益衝突しているにすぎない…と考えることはできると思う。」

「ふむー そうだとすると、どうなります」

「利益衝突だから、対抗してあるていどの摩擦があって、間で落としどころに収まればいいんだと思う。どちらか片方が真に怒り荒れ狂うことにならなければいい。」

「真に怒り…なんですそれ?」

「あまりに高い価格で物資が売られ、貧者にまるで行き渡らず、人々が暴徒と化して商人の倉庫や街を破壊しはじめたり、あるいは、利益が出ず持ち出しになるほどの奉仕が商人に強要され常態化してしまい、商人階級への成り手がいなくなって商業が荒廃したり。そうしたことがないように、利益衝突の間のどこかで落としどころになればいい」

「うーん」

「こういう考え方って、静かすぎるような気がしないでもないんだけどね。まあ、まあ、そんな話。タイカレー食いに行くか」

「ああはい、いいですね。あの交番裏の三階の」

「あそこのタイカレーの香りは頭頂部に来るでしょ。体調次第だけど魔物のようにうまいでしょ」

「魔物…? スパイスがいろいろ入ってるのはいいですね」

パクチーが主役だけど、香草の茎がごろっと入ってるのも最初すこしびっくりするよね。生姜も、単に薄めに…」

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