あんみやの心の中
「心をとぎ澄ますことで、庵野監督×宮崎監督のより深いペアリングを見出すことが可能です」
「庵野宮崎…『あんみや』か」
「そうそう。あんみや。どうやるかというとですね、たとえば、TV版エヴァンゲリオンの15話で、シンジとゲンドウの親子が、亡くなった母親の墓参りに行って、そこで話をするでしょう」
「するね」
シンジ:写真とかないの?
ゲンドウ:残ってはいない。この墓もただの飾りだ。遺体はない。
シンジ:…先生の言ってた通り、全部捨てちゃったんだね。
ゲンドウ:すべては心の中だ。今はそれでいい。
http://wikiwiki.jp/eva-shingeki/?%A5%BB%A5%EA%A5%D5%CA%DD%B4%C9%B8%CB%2F%C2%E8%BD%A6%B8%E0%CF%C3
「この会話はですね、宮崎駿先生が、若き部下、庵野秀明先生に語った、キャラクターアニメーターの心得なんじゃないかと思うんですよ」
「は?」
「つまりですね、もう何十年か前、まだジブリではなかったスタジオの一角で、夜中、二人で鉛筆を走らせながら、こんな会話をしていた」
宮崎先生:昔見た、○○っていうすごい作品の□□っていうキャラクターがいてさ。それがもう素晴らしくてね。最高なのだよ。
庵野先生:へえーそうなんですか! 素晴らしいんですか。ビデオテープとかお持ちですか? 見れます?
宮崎先生:馬鹿者!!
庵野先生:!?
宮崎先生:そんなもの持ってるわけないだろう! とっくに捨てたよ! 庵野くん、君はなにもわかっていないね。そんなだからダメなんだ。全然ダメだ。
庵野先生:ど…どういうことでしょうか?
宮崎先生:あのね、君もアニメーターになるならだ。若いときに自分が見て感動した作品というのがきっとあるだろう。しかし世界の技術の水準も自分自身の技量も、日々、年々、上がっていく。腕を上げてから、かつて感動した作品を見直せば、なあんだここができていなかったのか、あそこの仕上がりが甘かったのか、と、粗がわかるようになっていく。欠点に気づけるようになっていく。そうに決まってるだろう?
庵野先生:ハ、ハイ、そうかもしれません。
宮崎先生:自分が見て感動したとき、その素晴らしさ、最高の印象で記憶したその心の中のキャラクターが、一番美しいに決まってるんだ。自分の心の中にできるかぎり美しいものをできるだけたくさん集めていく。それは元の作品をこえて、自分が腕を上げれば上げるほど美しくなっていく。そうしたら今度は、自分の心の中からその最高の美しさを取り出して、アニメーションを描くんだよ。ビデオテープからビデオテープに描き移していくものじゃあないんだ。だから昔愛したキャラクターのビデオテープなんて、愛していたのだからこそ、持ってちゃいけない。そんなものは全部捨てる!!
庵野先生:(ひえ〜!!)
宮崎先生:少しは見込みがあるかと思えば。まったくダメダメだね君は。
庵野先生:心得ちがいをしておりました! たいへん勉強になります!(このおじさん最高に面白え〜!! いつかアニメに登場させてやろ!!)
「…と、こういうやりとりを込めたのが、あの墓参りの会話なわけですよ」
「ややこしい。妄想の屋上屋を重ねるといったところだな」
「この数十年前の会話は、師匠から弟子へのマウンティングでもありますが、弟子である庵野先生は、エヴァンゲリオンでそうやって、師匠である宮崎先生をおもしろおじさんとして描きかえしたわけです。つまり、リバです。意味合ってますでしょうか」
「本当か? どうだろう」
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