指輪世界の第五日記。基本的に全部ネタバレです。 Twitter 個人サイト

in front of her/ICOとポリゴンと見る見られる

 GDC2004のICOのパワーポイントスライド中に面白い一文を発見。

Product concept of ICO

の3のB、


B) Vivid heroine

you want to look/act good in front of her, aside from the game task

「生きているかのようなヒロイン。彼女の前では、ゲーム的タスクを離れて、善い振舞いを見せたくなる/演じたくなる。」

 ということは、初期段階での、もっとNPCが多くて、城を離れて街や砂漠も舞台として存在したというバージョンでは、そのNPCの前では"want to look/act bad"とか、"want to look/act clever" "foolish" "adultly" "childish" "manly" "ladylike"... などがありえたわけだ。わるい商人の店に下男として雇われるために、わざと愚かに振舞って侮られなければならない。しかし賢い娘っ子の前で愚かなことをしては好感度が下がるので、両者が揃った場面は窮地でありさあどう切り抜ける……こんなの必要なプログラム資源が多すぎて省かざるを得なかったのだろうが、しかし今後の発展に期待大期待大。

 ゲームのポリゴン化が著しい昨今、HalfLifeやメタルギアソリッドGTAゆめりあリバーシブルフェイス等に欠けているのは、見ることと見られることのゲーム性ではなかろうかと妄想することがある。NPCの反応が、その視界内に入るとアクティブになって殴りかかってくる、そうでないときは安全、というのでは、0か1かのデジタルすぎて、まだ発展余地がありそうだ。もっと真剣に見て、もっと真剣に見られるゲームがありえる。「ある対象に人格を感じるには、その対象が自分を見ている必要がある。チューリングマシンにはカメラがついていなければならない」という噂もあるし。避けるだけではなく、当たりに行く視線があってよさげだ。一対一ではなく複数NPCの取り合わせで変わっていい。相対距離と角度も影響したい。同様に考えて、もっと真剣に触ったり触られたりすることも可能。触られたらライフ減少/ガードで数フレーム有利 だけでは乏しい。シューティングゲームのボスに接近するような細心さでもって娘っ子に接近していくゲームがありえる。娘っ子だとあまりにあからさまにえろいので、恐竜とかの皮を被せることになるのかもしれん。

 なお、そもそものスライドでは、aside from the game task なので、ゲームシステムが要求しないことを、生気あるテクスチャとモーションという絵面の側からプレイヤーに行わせようという、いわば逆の考え方をしていることに注意。実際にはプレイヤーはゲームシステムを学習することで、わざと魔物にヒロインを担ぎ上げさせてから殴って有利に戦闘を進めたり、手を繋いだままぐるぐる回って「陸奥なら掴んだら、折る」等と言ったり(※修羅の刻ネタ)、ペナルティのないことに気付いてヒロインのそばで剣を振り回して怯えさせてみたりすることが多い(もっとも彼らは僕が脇で見ていたから照れてそうしていたのであって、一人で遊んでいるときは僕のようにロマンティックに、ねーやんに剣が当たらないように戦ったり、彼女が腕を痛めないように常にゆっくり歩いたり、先行してから呼ぶことで進んだりしているのかもしれない)。ここらへんは、ゲームが道徳教育を頼っていること(寄与していないことは明白として)のさりげない一例であり愉快だ。



参考:指輪世界内ICO関連文

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