ミドルアースクエスト一観/全力で接待プレイかも
一回半しか回していないごく粗い感想。
移動はエルフェンランド、戦闘はアンギャルドみたいなふうで、イベントやクエストも冒険してる感がよく出ており、それっぽい。要素は多く豊かだが処理はかなり統一洗練されていて、理解も運用も平易だ。
ヒーロー側は行動の自由度が広くて、しかも実際にはその失敗成功の結果の上下幅が狭い。(死亡ペナルティが小さいし、ストーリートラックはゆるがずに進むので。) 指輪物語が好きでゲームは下手、っていう人を楽しませるには非常にいい。
昔、叔母さんが、指輪物語好きなんだけどって言ってMERPを買ってきたことがあったが、当然遊べなかった(あのルールとチャートと「じゃ、TRPGなんで、あとはよろしく」に対して、当時中坊だったし…)。もしこれだったら遊べたかもしれない。
一方サウロン側は手数が少なく勝ち筋も細く息苦しい。システムを分析していかないと勝つことは難しいように思う。
半ゲーマーとゲーマーで、前者がヒーロー側を持ってのびのび遊び、後者がサウロン側を持って分析苦悩するのに適している感じがする。
妙な言い方だが、ヒーロー側とサウロン側とで強く非対称な、アンイーブンな空気感で遊ぶのに向いたゲームな気がする。ゲーマーサウロンはシステム分析や愚痴を半ゲーマーヒーローに講釈せず、顔では「いやーやられちゃったなー」とか言いながら盤面と内心では全力プレイをするといい。たぶん全力でやってもまだいい勝負になるので、態度がやわらかければ接待プレイになる。
指輪物語というのは、ウォーオブザリングなんかを見ると、なるほど大戦争でもあるし、クニツィア指輪なんかを見ると、なるほど殉難挺身のたすきリレーでもあるのだが、おそらく原作を読んで面白かった人の受けた印象では、あの旅路のあの世界には、もっとゆるい部分がたくさんある。分かれ道に来たけど、北をまわろうか、南から行こうか、どちらも面白いものが見れそうだし楽しい人に会えそうだなー、という世界観がけっこうあり、「正解の正しい道はひとつだけだ…!」ではない。ミドルアースクエストはそこのところについてかなりよく改善されている。
たとえばプレイヤーキャラクターの、エオメス、アルガラド、エレアノール、ベラヴォール、サーリンという、大看板でない人選にもそれを感じる。プレイヤーキャラクターがフロドやサム、ガンダルフやアラゴルンといった原作の大看板たちなゲームだと、彼らは後半から終盤にかけて担うことになる仕事が大きいので、最適化するとゲームプレイの前半も最適化することになってしまい、序中盤からすでにかつかつに細い道を通っていくゲームになりやすい。だが原作の序中盤の空気はけっこうゆるいわけだし、ボードゲームというものはマップ上で移動経路の選択が様々に幅広くコミカルな展開が起きたほうが良筋だ。比較的マイナーな人選をしたおかげで、「サムなんだからこういう動きは変だろう」、「アラゴルンがこんなギミックプレイをするのはらしくない」といった問題を回避できている。
日本語版のルールブックにはたちのわるい誤訳がひとつある。「闇の試練」で取れるのは「支援トークンおよび堕落カード」が正しい。その他にそこそこあり、日本語版公式の訂正ページは落ちてばかりいるので(一応ここ)、ゲーマーはファンタジーフライトのサイトのpdfファイルを読めるようにしておくのがいい。