指輪世界の第五日記。基本的に全部ネタバレです。 Twitter 個人サイト

リッチモンドへ!/Civil War, Brigade Seriesの切り分け

ityou2004-11-21

Translate this document into English: Cutting Viewpoints: Army Command and Corps Command

 (写真は本文と無関係です。茨城大学生協コピー機脇忘れ物入れに入っている猫。撮影F橋さん)

 The Gamers/MMP社のシビルウォーブリゲイドシリーズ(Civil War, Brigade Series公式 たかさわさんの所)はかなりおもしろいかんじです。アメリ南北戦争を旅団単位で仕上げたウォーゲームで、同ゲーマーズブランドWW2テーマのTCSに類似した、紙に書くコマンドコントロール+広いマップ+戦術戦闘という構成をもちますが、白地図に矢印を描きこんでいたTCSに対して、命令方法が自然言語なため、取り回しが7倍楽です。またA3一枚の損害表で各旅団のステップロスをチェックしていくので、ユニット密度がかなり少なくできています。すばらしいのは南北戦争なので射程が短い事で、歩兵2ヘクス砲兵10ヘクスなため、射線の判定がTCSの70倍楽、というか無いも同然で、軽い。

 コマンドコントロールシステムは、ルールブックに「あなたの常識と戦史についての知識とを助けにしてください。自分で出した命令の文言を出し抜いてプレイしようとするのはよい態度ではありません」などと書いてあるたいがいな大人ルールですが、これのおかげで戦術レベルのユニット運用と戦略レベルの部隊運用とが切り分けられるため、それぞれに思考を切り分けることになり、プレイが軽く、整理されています。これはプレイヤーの立場が、総司令官と野戦指揮官と、ふたつに表現されているということです。

 つまり、命令書を書くときには「ジャクソンが右翼を迂回してきたらたいへんなことになる。左翼からサイクスの部隊をまわそう、問題はどの道を通ってくるつもりかだ。どこで防衛するか…」と考えるわけですが、この時点ではおおまかな防衛地点の選定だけでいいので、戦略レベルの思考に集中できます。部隊単位のみでしか運用が許されないため、あっちこっちから少しずつユニットを引き抜いて回したりといった戦術的プレイをしなくて済みます。そして、いったん命令書が(タイムラグとサイコロ振りの発動判定をくぐりぬけて)活性化されたら、その戦場では、次の命令書が届き活性化するまで、いかに戦略レベルでの状況が変わろうと、その命令に従うしかないのですから、これまた余計なことを考えずに戦術レベルの戦闘に専念できます。戦略的に包囲されかけていようと、脇の部隊が戦意判定にファンブって攻撃中止していようと、やらなきゃいけないんだから、命令書の目標に対する戦術的最善を追求すればよいのです。

 部隊の機動と予備兵力の派遣の位置選定・時間争いが、戦略レベルでのメインテーマとなります。たいがいの機動に命令伝達の不確定なタイムラグがあるため互いの予測の<傍点>よれで押し過ぎたり引きすぎたり絡んだり、妙な盤面が展開し、その差し合いが美味しいところなので、広いマップを使い切るキャンペーンシナリオ以外のショートシナリオは片翼の折れたエンジェル同然。要注意ですが、もっともゲーマーズのゲームはどれも、多かれ少なかれそうです。

 戦術レベルでは、戦闘の判定で振るサイコロが2D6+D2+D6+D66という「色・大きさ違いの6個一度振り推奨」の大判振る舞いで、クリティカルもファンブルもよく出て愉快です。これもゲーマーズお得意です。ダイスは派手ですが勝敗は戦略レベルで決まりますから大丈夫です。戦略的失敗は戦術的には取り戻せない、というやつです。そしてこれは、戦略的判断にストレスを、ダイス振りにカタルシスを担わせるつくりでもあります。

spcategゲーム[ゲーム]