指輪世界の第五日記。基本的に全部ネタバレです。 Twitter 個人サイト

トゥームレイダーにおける空間把握

 トゥームレイダーTomb Raider(1996 Core Design Limited)は、3次元のマップを、ここからあそこまでジャンプが届くか、という思考で、いろんな角度から見て、見て、見て測るゲームだった。

 ある間隙を、一方向から見ただけではその幅や高低差がわからないので、動き回って数箇所の視座から測量する。そして助走したりしなかったりしてジャンプし、成功したら次のブロックに進み、失敗したら戻ってくるまで十数秒かかったり、落下ダメージが入ったり、即死したりする。

 トゥームレイダーの世界は四角くできており、判定はすべて直角についていて、斜めだったり丸みを帯びていたりはしない。ジャンプは縦横奥のいずれかの方向に沿ってのみ行うことになる。きっちり踏み切って行ったジャンプが失敗したら、それはそこからはもう飛び越せないということであり、角度を微妙に変えて再試行すればできるかもしれない、というようなことはない。

 ジャンプのために見て測る、という行為を繰り返すうちに、プレイヤーはマップ(FPS的に言うとレベル)に習熟していく。プレイヤーがマップを理解し、空間を把握していく。それにつれて、プレイヤーとマップの間の距離がせばまっていく。まあ、いわば、愛だ。トゥームレイダーのマップは当時として秀逸な照明の演出などに見目の美しさがあったが、それだけでなく、ゲーム性からもたらされる見るという行為が、あったわけだ。



 ドリームキャストソニックアドベンチャーゲームキューブマリオサンシャインにおけるジャンプや、その他のアクションは、このようにプレイヤーとマップとをつなぐ力にやや欠く。64以降のゼルダでは開き直って、ジャンプボタンを廃して踏み切りをオートで行うように仕様し、ジャンプのゲーム性をオミットしている。一方ジェットセットラジオでは、マップ上のそこかしこに設置された手摺りや壁が、一時的にゲームを3次元から1次元・2次元に縮退させる。これによってプレイヤーへの負担が操作可能な範囲まで下がり、制御できるようになっている。しかし基本的には、これらのポリゴンゲーは敵を配置してプレイヤーをその場に留めず、先へ先へと急き立てるようにできている。トゥームレイダーのようにほぼ敵不在で、この空間をじっくり見て、掌のように習熟し、愛でてくださいという態度ではない。



 ポリゴン以前の時代には、ジャンプというのは、優れたゲーム性を秘めたフィーチャーであった。水平方向と垂直方向への移動であり、点から点への移動である。助走により軌道が調節される。突き上げたり、踏みつけたりできる。そうした攻撃的な判定と、敵の攻撃を受ける食らい判定とが、同時に対象に接近していく動作である(そう考えると、シューティングゲームは自機の前方へ等速直線運動で攻撃判定を投げるのではなく、どの方向であっても、ボスとの距離の2乗に反比例したダメージをつけるべきではないのか?)。これに匹敵するフィーチャーはなかなか見当たらない。一瞬だけワイヤー(海原川背やヒットラーの復活)などがあったが……



 基本的にポリゴンゲーの問題点は空間把握にあるようだ。これはカメラ位置・画面レイアウトの制約により、距離や大きさの認識が困難になったことによる。2D時代のゼルダの戦闘のほうが、間合いや互いの向き、攻撃の軌道を意識していた。3Dゼルダではそれらは大味に、雑になっており、戦闘ギミックが「予告モーションとそれへの反応」に偏っている。

 空間把握の面からは、お使いレースゲーとしてPoint to Pointを繰り返させて街を認識させたクレイジータクシーやGTA3なども成功例と言えるだろう。





空想

FPSの攻撃が等速直線運動/弾速無限なのは気に食わない。弾速や軌道と、ダメージ量や自機マヌーバなどとの間にトレードオフを入れてはどうだ?

ときメモ3ゆめりあはポリゴンギャルゲーながら見るという行為の意味、触るという行為の意味がゲームシステム内になかった。じゃあダンシングアイか? というとそれも違って……いや合ってるかもしれないが……

・マップを真剣に見るゲームとして、ゴルフゲームの類、ロッククライミングの類、環境の影響の強い建築ゲー、などが考えられる。築城ゲーやタワーディフェンスなども考慮せよ。

・本来、空戦ゲーは三次元空間の把握・相対位置・ベクトル・ポテンシャルの意識が必要なはずだが、コクピット視点の制約が強く、エースコンバット等、実質アフターバーナー級の大味な爽快感に帰着している。三国無双同様。視点を絶対座標にとって米粒大の機体同士の空戦はできないのか?

・ジャンプ以外に有効なフィーチャーはないのか?

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